2025 年 43 巻 4 号 p. 103-109
脳画像データ解析は,ボクセル値を基盤としており,脳疾患の診断や治療において重要な役割を果たしている.近年では,人工知能技術による成果も得られているが,処理速度の向上と解析結果の説明性の確保が課題となっている.本稿では,次元削減によるスコアリング手法に着目する.適切に得られたスコアは,脳画像バイオマーカーとして活用可能であり,計算コストの削減と高い説明性が期待される.解析の前処理として解剖学的標準化を行うと,行列分解法の適用が可能となる.本稿で紹介するマルチ教師付きスパース成分分析は,従来の行列分解法を発展させた手法であり,膨大な脳画像データを段階的な線形変換により効果的に縮小する.さらに,逆変換を通じて関連する解剖学的脳領域を同定し,結果の説明性を高める.また,マルチ教師の一部を反転させることで不要な変動を非学習する方法を,具体的な解析例を通じて紹介する.