Papers in Meteorology and Geophysics
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松代附近の地震に伴った前震余震におけるマグニチュードと発生頻度の関係の差について
末広 重二
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1969 年 20 巻 2 号 p. 175-187

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抄録
967年9月にマグニチュード5.1の地震が,1964年に前余震で異なった“b”値を与えた地震とほとんど同じ場所で発生し,多数の前余震を伴った。この前余震は松代地震観測所に設置されていた広帯域,広ダイナミックレソヂの磁気テープ式地震計で完全に記録された。前回の“b”値は前余震についてそれぞれ0.35と0.76であったが,今回は0.59と0.89という値がえられた。
震源域を共有する1964年と1967年の地震の間の主な相異点は,本震のマグニチュードが前回の3.3に対して今回は5.1であったことと,発生の時期とである。1965年にはじまった松代群発地震は1967年の初めから周辺地域に拡大し,今回の地震の起った坂井村附近は当時すでに相当高いバックグラウンド活動を示していた。1964年と1967年で前震のbが余震のbより小さいということは同様であるが,今回の前震のb値が前回程小さくないということは,今回はバックグラウソド活動が高かったためと解される。すなわち,純粋な前震のb値として今回も前回と同じ0.35を仮定し,それがb=1のバックグラウソド活動の上に観測された様な比率で重畳したとすると,結果としてb=0.62が与えられるはずで,これは今回観測された0.59とよく一致している。logN=a-bM は重ね合せの原理には従わないが,結果を直線で近似して平均的なb値を求めることはできる。
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© 気象庁気象研究所
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