Papers in Meteorology and Geophysics
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20 巻, 2 号
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  • 数値実験
    曲田 光夫
    1969 年20 巻2 号 p. 91-110
    発行日: 1969/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    山越気流の理論としては,風下波動に関する線型理論跳水現象に関する水力学的理論等があるが,最近では数値実験による研究が行われるようになった。筆者等は富士山の雲の写真観測によって,気流の変形の状態を推論してきたが,富士山の雲を大局的に分類すると,笠雲,つるし雲,旗雲,jump状雲,その他になるが,これらの雲の成因を数値実験によって研究するのが,この論文の目的である。笠雲,つるし雲は風下波動の理論によってある程度説明できるが,その色々の変形については複雑で,なお不明の点が多い。冬季北西季節風の時に現われる旗雲,暖湿な南西気流によって起るjump状雲については線型理論によって説明することは困難で,この論文では,地表面からの加熱,冷却の効果を入れた数値実験によって説明することを試みた。すなわち,寒冷な北西気流が日射による山肌からの加熱蒸発効果によって旗雲が形成され,また,暖湿な南西気流が地表からの冷却によって斜面を急降下する流れを生じ,それがjump状の雲を形成するようになると推論した。ここで使用した数値モデルは2層モデルで,垂直構造については不充分であり,なお改善の余地が残されている。
  • 相馬 清二
    1969 年20 巻2 号 p. 111-174
    発行日: 1969/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    メソスケールの地形と気流の問題の中で,乱流剣離の現象がどのような役割を演ずるかを風洞実験,ならびに現地観測資料によつて研究した。風洞気流内で山脈状の地形の模型実験を行なった処によると,風下斜面に剥離現象が観察される。そして風下斜面上では逆流が吹く。山の前面に細い角棒を置いて気流に乱れを与えてやると,この斜離現象は解消し,逆流は消滅する。この際に,乱れの与え方は微妙で,ある程度以上の強い乱れを与えないと,剥離現象は解消しない。与えられる乱れには限界値がある。
    以上は風洞実験の結果であるが,自然風にもこれとよく似た現象が見られる。その一つは“おろし”の現象である.従来,強い黙“おろし”の発生機巧に対して,山岳波理論が主に適用されていた。しかしながら,強い“おろし”として有名な“やまじ風”の資料を検討した処によれば,乱流剥離の機構によって説明した方が,むしろ適切でないかと思われた。剥離の現象は,必らずしも,山脈型の地形に限られている訳ではない。適当な傾斜をもってさえおれぽ弧峯でも,この現象は見られる。富士山を例にとり,地表観測資料,映画フィルムによる雲の動きの観察,およびフラッシュ筒による富士山周辺の気流の観測からこの事実を確めた。
    この報告の中には,剣離に原因する下層気流の滞留の問題が論じられている,これまでは,汚染空気の上方への拡散を抑えている原因として,気層の安定性,気温の逆転層が主に取り上げられていた。平坦な地形の場合には,これだけ考えればよかったが,山脈,盆地地形では,この他に,剥離に原因する拡散の抑制現象を考えなければならない。剥離の現象は純力学的なものであって,この点,温度逆転層などとは全く発生機構は異なる。
    なお,この報告に,風洞実験の結果が多く取り入れられている。これと自然風とを対応する場合には両者間の相似律が問題となるが,そのためには,境界層理論における境界層遷移の概念を導入し,その母数を用いることの必要性をのべている。
  • 末広 重二
    1969 年20 巻2 号 p. 175-187
    発行日: 1969/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    967年9月にマグニチュード5.1の地震が,1964年に前余震で異なった“b”値を与えた地震とほとんど同じ場所で発生し,多数の前余震を伴った。この前余震は松代地震観測所に設置されていた広帯域,広ダイナミックレソヂの磁気テープ式地震計で完全に記録された。前回の“b”値は前余震についてそれぞれ0.35と0.76であったが,今回は0.59と0.89という値がえられた。
    震源域を共有する1964年と1967年の地震の間の主な相異点は,本震のマグニチュードが前回の3.3に対して今回は5.1であったことと,発生の時期とである。1965年にはじまった松代群発地震は1967年の初めから周辺地域に拡大し,今回の地震の起った坂井村附近は当時すでに相当高いバックグラウンド活動を示していた。1964年と1967年で前震のbが余震のbより小さいということは同様であるが,今回の前震のb値が前回程小さくないということは,今回はバックグラウソド活動が高かったためと解される。すなわち,純粋な前震のb値として今回も前回と同じ0.35を仮定し,それがb=1のバックグラウソド活動の上に観測された様な比率で重畳したとすると,結果としてb=0.62が与えられるはずで,これは今回観測された0.59とよく一致している。logN=a-bM は重ね合せの原理には従わないが,結果を直線で近似して平均的なb値を求めることはできる。
  • 地震対ノイズ比の改善
    広野 卓蔵, 末広 重二, 古田 美佐夫, 佐藤 馨
    1969 年20 巻2 号 p. 189-206
    発行日: 1969/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    第1報に述べたと同様の研究観測を,小名浜測候所構内で行なった。今回はノイズのみでなく地震も観測して,深さによる地震動振幅の変化を解析し,SN比の改善を調べた。観測を行なった深度は,10,20,35,50,75,100搬である。主な結果を次に述べる。
    1)ノイズの減衰は,深い程また周波数の高い程,大きい。特に75mで岩盤に達してから減衰が著しくなった。
    2)夜間と昼間で6~10cpsのノイズは約1/2に減るが,低周波の部分(0.63~4cps)は変らない。
    3)列車,自動車,重錘落下の衝撃的ノイズは深さと共に急激に減衰し,75m以下では現れない。
    4)地震動振幅は深い程また周波数の高い程減少する。
    5)ノイズの減衰を考慮に入れた,SIV比は岩盤に達してから特に改善される。100mでは平均3~4倍の改善が見られた。
    6)3ヵ月にわたって,地中地震計による現業的観測と読み取りを行なった。読み取り作業ははるかに容易で,近地地震の探知能力はMにして0.3~0.5高められたことになる。
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