Papers in Meteorology and Geophysics
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接地気層における乱流拡散の機構
伊藤 昭三
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1970 年 21 巻 2 号 p. 141-241

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抄録
接地気層における乱流拡散の特性を理論的に検討し,その結果を実験資料によって確認した.
主な結果は次の通りである.
第1部から第4部において風速,温度の鉛直分布の普遍関数が詳細に議論される.乱流による顕熱の輸送や渦拡散係数が実験値と比較してある.実験値は理論と良く一致する.
第4部では拡散による雲の拡りと風下距離の関係が理論的に求められ,広範囲の安定度における実験値と比較してある.
グリーングロウプロジエクトによって得られた拡散実験の資料が数値実験によって解析してある.実験場の条件を入れることによって安定成層における実験資料がよく一致する.
第1部から第4部において煙の拡りと風下距離の間によく一致する理論が得られたが,その理論において使用された乱れのスケールについて充分な検討がない,第6部と第7部において,気象研究所によって計画された富津海岸における接地気層の観測結果およびグレートプレインプロジエクトと呼ぼれる2つの実験資料を使って,更に詳細に接地気層における乱れの普遍的特性が議論してある.
まず,第6部において,運動量,顕熱および水蒸気の流束と傾度の関係を求めてある.
この結果は安定度Z/Lが不安定層では0から-1,安定成層では0から0.25の範囲でよく一致する.
第7部では第6部において得られた結果により再び渦拡散係数と安定度の関係を示してある.
リチャードソン数Riは安定度Z/Lと等しくないことを示してある.
さらに,この論文で得られた乱れのスケールと渦拡散係数との関係を議論し,運動量,顕熱,水蒸気の拡散係数がそれぞれ次のようにあらわされることをのべてある.
KM1/3Lu4/3
KH1/3Lu1/3Lθ
Kw1/3Lu1/3Lw
ここにLiは脚符 u,θ, w によってそれぞれ風,温度および水蒸気に関する鉛直方向の乱れのスケールである.εは乱れのエネルギーの消散率である.
最後に第6部に得られた結果により,再び乱流拡散を議論してある,その結果は簡単に次のように表わされる.
風下距離に対する鉛直方向への煙の拡りの割合は風速のシヤーが小さく,風速が弱いほど大きくなり,風速のシヤーが大きく風速が強いほど小さくなる.
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© 気象庁気象研究所
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