Papers in Meteorology and Geophysics
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21 巻, 2 号
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  • 土屋 巌
    1970 年21 巻2 号 p. 73-87
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    いわゆる赤道太平洋乾燥帯における降雨は,約12,000kmにも及ぶ長大な帯状領域の全域にわたって,年々の変動が特異であることで知られている.
    筆者は,ドイツ海洋気象台発行のDie Witterung in Übersee(1953- )に示された毎年の世界降雨分布とその偏差図を調査して,前記乾燥帯で年雨量が極端に多い年には,ニューギニアから西にかけてインドに至る領域で広域の年雨量減少の発現することを見いだした.そのような年は1957,1958,1965および1966である.また,乾燥帯でより少なく,インド周辺でより多いというような年として,1955, 1956および1962があげられる.
    インドの洪水・干ばつの資料および乾燥帯のOcean島とFanning島の永年降雨資料を調べると,前述のようなインド-赤道太平洋領域間の逆位相の降雨変動が,さらに過去にさかのぼっても存在したことがわかる.
    このように特異な広域雨量変動の発生には,南東貿易風の変動が介在するが,同時に南半球中緯度偏西風の変動も考慮されるべきである.偏西風の年々変動はかなり大きく,弱い年には冬(7月)でも夏(1月)より弱いことがある.その顕著な例としては1957および1958の場合がある.
    WALKER(1924)の提唱したsoutheron oscillation は, BJERKNES(1969)によってWalker circuIationという東西方向の循環モデルに発展したが,南半球偏西風の変動をこのモデルの吟味に加えることが可能である.
  • 混合距離理論
    黒崎 明夫
    1970 年21 巻2 号 p. 89-112
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    混合距離の関数形で,中立状態のとき von Karman の混合距離に一致し,接地層ではKEYPSの法則に従うようなものが導かれた.水平方向に一様であるという仮定のもとに,定常状態と日変化の方程式系を解いた.エネルギー方程式を考慮すると,この問題は時間微分の項を入れて解かねばならないことがわかる.そして時間積分の結果はエクマン境界層の日変化の諸特徴を示している.
  • 相似理論
    黒崎 明夫
    1970 年21 巻2 号 p. 113-125
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    エクマン境界層の相似理論を,風速の複素表示を用いて導いた.地表面の応力と風向の回転角を決定するに便利なように,図表を作成した.次に,接地層の外では渦動交換係数が高さによらないと仮定して,さらに具体的な関係式が得られた.O'Neillにおける観測資料の解析結果によれば,理想的な条件のもとでは理論とよく合うことがわかる.
  • アメリカ合衆国におけるその地域差
    片山 功仁慧, 籾山 政子
    1970 年21 巻2 号 p. 127-139
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    死亡の季節変動形態は世界的にみて概してその国の文化程度を現わすと考えられ,西欧諸国にも我国と同様の冬季集中型を呈する国と,それを征服した形態と思われる緩慢化型を呈する国とがあることは既に明らかにされている,本研究では総死亡及び乳児死亡に顕著な緩慢化の認められている米国について,脳卒中死亡及び心臓病死亡の季節変動形態の変遷を地域的に考察する.
    死亡率の分布は各州の人口の年令構成,生活条件等により地域的にかなり異なる.そこで気候,地形及びそれらに基づく経済条件等により8つの地理区に分類すると,1930年,40年及び50年の各10年聞の変化に,以下の特徴が見出せる.
    A.初めから夏山がなく季節変化が緩慢で,一旦冬季集中を呈した後,更に緩慢になる.温暖な太平洋岸,人口稀薄で豊かな鉱山都市を含む山岳地方及び穀倉地帯であり工業化も盛んな五大湖地方の3地区における両死因,及び温暖な保養地気候のフロリダにおける心臓病がこれに属す.豊かな地域の型といえる.
    B.初め低いとはいえ夏山を有し,次に夏山の低下により季節変化は増大するが,後に緩慢化を示す.比較的遅く開発された大平原南部,生活水準の低い黒入々口の多い南部の両死因及びフロリダの脳卒中がこれに属す.
    C.初めから夏山はなく季節変化も小さかったが,死亡率の上昇と共に冬季集中を示し,まだ緩慢化を呈さない.寒冷な大平原北部の両死因にみられる形態である.
    D.初めから明瞭な冬山だけであるが,死亡率の増加にも拘らず,季節変化は緩慢になる.文化的水準の最も高い北東部の両死因にみられる形態である.
    以上,緩慢化現象を呈する米国も,詳細にみれば,地域の地理的条件,人種の構成内容等により本現象の出現に差異があることが明らかになった.しかし各地区ともそれなりの進歩をなしているといえよう.また最も寒冷な大平原北部において乳児死亡は緩慢化を最も顕著に示したのに対し,両死因にまだ本現象がみられないことは,成人病に対する人工気候の重要さを示しているともいえよう.
  • 伊藤 昭三
    1970 年21 巻2 号 p. 141-241
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    接地気層における乱流拡散の特性を理論的に検討し,その結果を実験資料によって確認した.
    主な結果は次の通りである.
    第1部から第4部において風速,温度の鉛直分布の普遍関数が詳細に議論される.乱流による顕熱の輸送や渦拡散係数が実験値と比較してある.実験値は理論と良く一致する.
    第4部では拡散による雲の拡りと風下距離の関係が理論的に求められ,広範囲の安定度における実験値と比較してある.
    グリーングロウプロジエクトによって得られた拡散実験の資料が数値実験によって解析してある.実験場の条件を入れることによって安定成層における実験資料がよく一致する.
    第1部から第4部において煙の拡りと風下距離の間によく一致する理論が得られたが,その理論において使用された乱れのスケールについて充分な検討がない,第6部と第7部において,気象研究所によって計画された富津海岸における接地気層の観測結果およびグレートプレインプロジエクトと呼ぼれる2つの実験資料を使って,更に詳細に接地気層における乱れの普遍的特性が議論してある.
    まず,第6部において,運動量,顕熱および水蒸気の流束と傾度の関係を求めてある.
    この結果は安定度Z/Lが不安定層では0から-1,安定成層では0から0.25の範囲でよく一致する.
    第7部では第6部において得られた結果により再び渦拡散係数と安定度の関係を示してある.
    リチャードソン数Riは安定度Z/Lと等しくないことを示してある.
    さらに,この論文で得られた乱れのスケールと渦拡散係数との関係を議論し,運動量,顕熱,水蒸気の拡散係数がそれぞれ次のようにあらわされることをのべてある.
    KM1/3Lu4/3
    KH1/3Lu1/3Lθ
    Kw1/3Lu1/3Lw
    ここにLiは脚符 u,θ, w によってそれぞれ風,温度および水蒸気に関する鉛直方向の乱れのスケールである.εは乱れのエネルギーの消散率である.
    最後に第6部に得られた結果により,再び乱流拡散を議論してある,その結果は簡単に次のように表わされる.
    風下距離に対する鉛直方向への煙の拡りの割合は風速のシヤーが小さく,風速が弱いほど大きくなり,風速のシヤーが大きく風速が強いほど小さくなる.
  • 噴火微動・前駆地震・A型地震
    田中 康裕
    1970 年21 巻2 号 p. 243-289
    発行日: 1970/10/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    三原山の火山性微動には,火山性常時微動,前駆微動,噴火微動および末期微動の4種類がある.また,火山性地震には,噴火の前駆地震とA型地震の2つの型がある.
    噴火活動に際して,これらの微動や地震は規則的な発生順序を示し,およそ,次のように進行する.
    火山性常時微動→ 前駆地震→←→ 前駆微動→ 噴火微動→ 末期微動→ 火山性常時微動
    このように,微動と地震の型が分類でき,かつ,火山活動の規則性が見出されたのは,1965年以降,伊豆大島島内に展開したJMA-62A型電磁地震計の多点観測の成果である.
    ところで,1964年以前の三原山の火山観測には,器械式地震計(主としてWiechert地震計)が使用されていたが,この器械は,性能および観測点の位置の関係で,噴火微動,前駆地震の一部およびA型地震しか記録できなかったことが判明した.
    そこで,Wiechert地震計で観測を行なった全期間(1938年11月~1969年)について,噴火の前駆地震を再験測し,それと,噴火との時間的関係を調べた.
    その結果,大抵の噴火活動の始まる3時間ないし3日前に,前駆地震が発生していたことがわかった.また,前駆地震と噴火開始との時間差は,火口内の閉塞の度合いに関係が深く,溶岩が火口を埋めている時期には時間差が概して長く,火口底が深く開いている時期には短くなる傾向を示した.
    噴火微動は,噴火の衝撃による震動であることがたしかめられた.その形は,噴火が連続するか,断続するか,単独で起こるかによって,連続型噴火微動,唸り型噴火微動,孤立型噴火微動などに変形する.
    噴火微動と前駆地震は,どちらも押円錐型の発生機構を持っていると考えられる.噴火のからくりは次のように考えられる.
    噴火活動は,火口縁から約500mの深さで発生する前駆地震によって火ぶたが切られ,その地震によって生じた火道内の割れ目に沿って溶岩や火山ガスが上昇を始める.この時,前駆微動が発生する.やがて,火口縁から約300mの深さで噴火が起こる.
    弧立型噴火微動の最大振幅の頻度を,石本・飯田の方法で統計すると,統計図は多くの場合,上に凸に折れ曲った2つの直線で現わされる.石本・飯田の系数mは,小さな振幅に対してm=2~4,大きな振幅に対してm=3~7となる.また,小さい噴火微動だけが発生した時期の統計では,統計図に折れ曲りができなくて,一つの直線で現わされる.この場合のmは3~4である.
    A型地震は火山性地震のうちの一つの種類で,伊豆大島の北西~ 西~ 南~南東の広い近海で発生する深さ0~20kmの地震を総称して名付けたものである.最大振幅の頻度について統計した石本・飯田の系数mは約1.8を示す.群発することが多いが,群発活動期と三原山の噴火活動期との関係は薄い.
    伊豆大島で観測される地震波の初動方向は特殊な方向へかたよる.これは,伊豆大島ないしその周辺の地下構造と大きな関係があり,伊豆大島の北北東では深く,南南西では浅くなって傾斜している地下構造が考えられ,また,伊豆大島および大島の東側では,内部に地震波速度を遅くする所があると考えられる.また,A地型震が発生する地域と,発生しない地域とを通過する地震波の初動のかたよる方向には,顕著な相違が認められる.
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