抄録
白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumによるスチレンモノマーおよびポリスチレンの分解を行った.スチレンモノマーはわずかに分解が起こり,分解産物として4-ヒドロキシ安息香酸とマンデル酸が検出できた.しかし,ポリスチレンは,化学構造の変化が認められず,分解は確認できなかった.半経験的分子軌道法により,スチレンモノマーおよびポリスチレンの反応性を検討した.スチレンモノマーの分解は4位の水酸化の後,酸化反応が起こり4-ヒドロキシ安息香酸が生成していると推定できた.またビニル基の酸化によりマンデル酸が生成していることも予測できた.一方,ポリスチレンのモデルとしてスチレンペンタマーのHOMOを計算した結果,スチレンモノマーより反応性が悪いことが予測されたが,エネルギー的にはそれほどの違いはなかった.ポリスチレンの分解性の難しさは,その疎水性や撥水性に主な原因があると考えられる.