日本きのこ学会誌
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担子菌きのこに関する基礎および応用研究の新展開
宍戸 和夫
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2009 年 17 巻 3 号 p. 99-105

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抄録
我々はシイタケ由来のDNA結合性転写因子PRIBとLe.CDC5について研究した.PRIBはZn(II)2Cys6とbZIPモチーフからなるDNA結合ドメインを持ち,16-bpの特定配列(保存配列:5'-GGGGGGGACAGGANCG3')に結合した.PRIBの標的遺伝子としてpriB,uck1(UMP-CMPキナーゼの遺伝子)およびmfbCが特定された.uck1は特にひだ組織において胞子形成と菌糸細胞分岐のためのヌクレオチド代謝に関わっていると考えられた.mfbCの発現産物MFBCはeIF5Aへの結合を介してひだにおける菌糸細胞の分岐に関与していることが示唆された.Le.CDC5はc-Myb型DNA結合ドメインとロイシンジッパーを持ち7-bpの特定配列(保存配列:5'-GCAATGT-3')に結合すること,6-bpの特定配列(保存配列:5'-CAACAC/T/G-3')に結合するCIPBとともに柄成長の制御に関わる遺伝子ctg1の転写を調節していると考えられた.さらに我々はシイタケの子実体発生・形成に関わる青色光レセプターPHRA,これと相互作用するタンパク質PHRBを特定した.PHRAがDNAに非特異的に結合するのに対しPHRBは7-bpの特定配列(保存配列:5'-GATA/TTT/G/AC-3')に結合すること,PHRBがチロシナーゼの遺伝子(Le.tyr)の5'上流プロモーター領域に結合することが明らかになった.我々は,リグニンあるいはキシランを顕著に分解できるウシグソヒトヨタケ一核菌糸の育種,および多量のリグニン分解酵素あるいはラット由来シトクロムP450の一種CYP1A1を生産するアラゲカワラタケ一核菌糸の育種に成功した.ウシグソヒトヨタケ育種株は稲ワラからセルロースを取り出すことに,アラゲカワラタケ育種株はダイオキシンを分解することに活用された.
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2009 日本きのこ学会
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