日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
風土病といわれてきたチャアナタケモドキFomitiporia torreyae に起因するスギCryptomeria japonica 非赤枯性溝腐病の発生生態研究史
寺嶋 芳江
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2016 年 24 巻 3 号 p. 113-120

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抄録
担子菌チャアナタケモドキは,スギ品種サンブスギに非赤枯性溝腐病を起こす.長年,本病は千葉県特有とされてきた.しかし近年,本菌はスギ他品種,経済的に重要なヒノキ,ニホンナシにも被害を与える.野外観察により,本菌は枯死枝から侵入し,形成層を破壊し,肥大生長を阻害すると推測された.しかし,なぜサンブスギが被害を特に受けやすいかについての説明は明らかではなかった.本菌の生理的性質として木材構成成分である炭素源を資化すること,高いグルコース/イースト抽出物比の培地,および低い水分活性の培地でも成長することが実験的に示された.さらに,生枝樹皮および枯死枝材に比べて枯死枝樹皮と生枝材により多くのグルコースが含有され,生きた材を覆う枯死樹皮からなる「枯死直前の幹に残る枝」はチャアナタケモドキの好適な栄養源である.枯死直前の枝を幹に長期間残すというサンブスギの品種特性が本菌侵入に好条件を提供している.また,罹病部分では本菌侵入に対して本来防御物質として働くポリフェノール含有量が少ない.
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2016 日本きのこ学会
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