2023 年 30 巻 4 号 p. 144-149
原木のうち内樹皮,辺材,心材のセシウム137(以下,137Cs)濃度分布に違いのある2地区の原木を用いて,原木からシイタケ子実体への137Cs移行と子実体収量の関係を検討した.結果,子実体137Cs濃度を辺材137Cs濃度で除して標準化した値と子実体収量との間には,汚染分布の異なる2地域で計4回の発生のうち3回の発生回において有意な負の相関関係が認められた.このことから,原木の汚染分布にかかわらず,子実体137Cs濃度は辺材137Cs濃度と収量によっておおむね規定されるという関係性が存在することが示唆された.また原木毎の子実体収量が少ない場合には,辺材137Cs濃度に対して子実体137Cs濃度が顕著に高くなる傾向が認められ,子実体収量は生産現場でも確認可能であることから,放射性物質対策の指標として利用できる可能性がある.