日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A22
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中国産および日本新産BipolarisCurvulariaおよびDrechslera属菌株の形態および分子系統上の位置
*月星 隆雄張 猛早川 敏広岡部 郁子菅原 幸哉
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抄録

2008年新潟県でオーチャードグラスおよびリードカナリーグラスから分離されたBipolaris属菌は, 長さ50-225μm の大型黄褐色分生子を形成し, 日本新産種B. zeaeと同定された. 本菌はrDNA-ITS塩基配列に基づく分子系統解析ではB. bicolorの近縁に位置した. 中国河南農業大学保存株Curvularia sichuanensisはへその突出した褐色分生子を形成し, 形態的に類似するクローバ汚斑病菌C. trifoliiより分生子幅が広く, 異なる分子系統となり, 日本でも沖縄県のローズグラスから分離された. 中国産種C. pseudorobustaは分生子が褐色で強く屈曲し, 中間細胞が大きく膨れ, C. trachycarpiの分生子は淡色でほとんど屈曲せず, 中間細胞はあまり膨れず, イネ褐色米の原因菌C. inaequalisと近縁であった. その他数点の中国産菌株が既報の形態記載あるいはITS配列がDDBJデータベースと一致せず, 新種となる可能性がある. 静岡県で採集した葉枯パッチ症状を示すベントグラスから日本新産種Drechslera catenariaを認めた. 本菌の分生子は淡色, 倒棍棒形で, 先端に向かって漸尖し, コムギ黄斑病菌D. tritici-repentisと近縁であった. また, 北海道, 山形, 長野および静岡の各県で採集した同症状サンプルからはブルーグラス褐斑病菌D. poaeと形態的に類似するが, 分生子がより淡色で, 偽隔壁数の少ない菌が分離され, 分子系統でも明らかに別グループとなることから, 新種と考えられた. Bipolaris, CurvulariaおよびDrechslera属菌の形態およびrDNA-ITS領域の配列データを蓄積することで, 各菌種の分子系統上の位置をより明確にできる.

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© 2009 日本菌学会
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