固体内のイオン輸送の基礎的理解は,全固体電池などの実用的なデバイス開発に重要な役割を果たす.イオン輸送特性を微視的に理解し定量的に解析する上で,分子動力学法(MD)は有用である.筆者の博士論文には,固体内イオン伝導においてイオン同士が相関し合い伝導する効果(イオン–イオン相関)に着目したMD 研究が纏められている.その紹介記事として本稿の前半では,固体内イオン輸送の理論計算研究において,イオン–イオン相関を考慮する重要性を論じる.後半では,イオン–イオン相関を考慮したより高精度なイオン伝導度を高速に計算するために開発した非平衡MD 手法の概要とその有効性を論じる.