アンサンブル
Online ISSN : 1884-5088
Print ISSN : 1884-6750
ISSN-L : 1884-6750
25 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
「上田先生追悼記事」
特集「異常な固体ーガラス・ゲル・粉体ー」にあたって
連載
最近の研究から
  • 金 賢得
    2023 年 25 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    著者は,これまで開発してきた量子分子動力学法に,フェルミオンの核スピン統計を満たす核量子回転を取り入れる拡張を行うことで,量子回転分子動力学法と呼べる新手法を開発した.これにより,フェルミオン水素核ペアが反対称核スピンを持ち対称な核量子回転を有するパラ水素と,対称核スピンを持ち非対称な核量子回転を持つオルソ水素の分子エネルギー差(170 K)や,遠心力によるH-H 結合長差・振動数差,水素分子種ごとに定性的に異なる比熱や,温度に依存して変化する各水素分子種の存在比までを再現した.特に,カーボンナノチューブ内で吸脱着を繰り返すパラ水素やオルソ水素の実時間ダイナミクスを計算することに初めて成功し,「電子状態は同じであるにも関わらず,核量子回転が励起するほど水素分子の並進・配向ダイナミクスが促進され,H-H 振動数はredshift しつつ振動強度は増幅する」と結論付けた.このような動的知見は,静的な量子化学計算や従来の経路積分分子動力学法では得ることができない.量子回転分子動力学法は,計算手法自体が確立していなかったオルソ水素の初めての量子動力学法であるだけでなく,電子励起状態ではなく核励起状態において実時間の分子ダイナミクスを追える初めての量子動力学法である.

  • 米谷 佳晃
    2023 年 25 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    静電相互作用は長距離力であり,実空間のカットオフで計算することは難しい.様々な改良法が開発されているが,有効性については未知の部分が多い.筆者は,最近カットオフの改良法の性質を理論的に検証したので,本稿で紹介する.Neumann-Steinhauser の手順を参考に,オンサーガーの誘電体モデルを使ってカットオフの影響を検証した.単純なカットオフとカットオフなしの他に,3種類のシフト関数を扱い,その効果を検証した

博士論文紹介
  • 佐々木 遼馬
    2023 年 25 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    固体内のイオン輸送の基礎的理解は,全固体電池などの実用的なデバイス開発に重要な役割を果たす.イオン輸送特性を微視的に理解し定量的に解析する上で,分子動力学法(MD)は有用である.筆者の博士論文には,固体内イオン伝導においてイオン同士が相関し合い伝導する効果(イオンイオン相関)に着目したMD 研究が纏められている.その紹介記事として本稿の前半では,固体内イオン輸送の理論計算研究において,イオンイオン相関を考慮する重要性を論じる.後半では,イオンイオン相関を考慮したより高精度なイオン伝導度を高速に計算するために開発した非平衡MD 手法の概要とその有効性を論じる

研究室だより
feedback
Top