マイコトキシン
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シンポジウム
公衆衛生から見たハウスダストの真菌相
戸矢崎 紀紘
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2002 年 52 巻 1 号 p. 45-55

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抄録
わが国の住宅様式は第一次オイルショック以降エネルギーの省力化から,断熱材,新建材を取り入れた機密性の高い構造の家屋に変化した.その結果,換気量不足,結露の発生から集合住宅,独立住宅を問わず室内の真菌汚染が激増する原因となった.さらに,冷暖房器具の普及から,室内温・湿度の調整はヒトばかりでなく真菌にとっても最適な増殖環境となり,住環境の除菌対策が大きな問題となってきた.室内環境中に生息・浮遊している真菌は外部より流入してくる真菌とハウスダスト中をはじめ室内で増殖する真菌がある1).室内環境真菌の研究は喘息アレルゲン検索を目的に開始されたが,その後,室内環境中に生息・浮遊. している真菌による感染症が大きな問題となってきた.今日,わが国の医療技術の進歩は目覚しく,従来であれば生存できなかったヒトも延命できるようになり,寿命も飛躍的に伸び,高齢化社会を迎えたことから,生活環境中の真菌による日和見感染症やアレルギー性疾患が増加し,日常生活の周辺に常在する微生物も健康維持の上で無視できなくなった.このように室内環境中の真菌相を把握することは日和見感染症やアレルギー疾患などの蔓延に関与する因子を検索する上で重要である.
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© 2002 日本マイコトキシン学会
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