マイコトキシン
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52 巻, 1 号
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原著
  • 赤尾 三太郎, 岸川 正剛, 荻原 喜久美, 黒田 啓子
    原稿種別: 原著
    2002 年52 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    先に,我々はアフラトキシンB1をフィッシャー344系雄ラットに投与して肝細胞癌を誘発し,肝癌細胞株AFB-1を分離した.本研究において,我々はAFB-1のmRNAとラット正常肝細胞株BL9のmRNAについてサブトラクションcDNAライブラリーを作製し,ノーザーン・ブロット解析によりAFB-1のmRNAとハイブリッドを形成するがBL9のmRNAとはハイブリッドを形成しない650 bp cDNAを検出した.我々は,650 bpcDNA/ベクター組換体DNAをAFB-1とBL9に導入し,次いで,元の細胞または組換体DNA導入した細胞1×107個を同系ラットの背部皮下に移植した.650 bp cDNA/ベクター組換体DNAの導入はAFB-1の皮下腫瘍形成率を増大させ(元のAFB-1を移植した雄ラットにおける形成率が13例中9例に対し,組換体DNA導入AFB-1を移植した雄ラットにおける形成率は14例中14例,P< 0.02),また,肺転移率も増大させた(元のAFB-1を移植した雄ラットにおける転移率は13例中0例に対し,組換体DNA導入AFB-1を移植した雄ラットにおける転移率は14例中9例,P< 0.001). 650 bp cDNA/ベクター組換体DNAの導入は正常肝細胞株BL9を癌細胞に転換した,即ち,組換体DNAを導入したBL9は雄ラット10例中9例,雌ラット10例全例に皮下腫瘍を形成し,また,雌ラット10例中6例に肺転移巣を形成した.本研究は,サブトラクションcDNAライブラリーから分離したcDNAが癌細胞の腫瘍形成並びに肺転移を促進すると共に,正常細胞に腫瘍形成能並びに肺転移能を誘発することを初めて示したものである.
  • 新国 佐幸, スシロ・ウトモ ジョコ, サティア・アンタルリナ スリ, ギンティング アリアナ, 後藤 哲久
    原稿種別: 原著
    2002 年52 巻1 号 p. 13-22
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    インドネシアの醤油ケチャップおよび発酵大豆タウチョの大豆麹を採取した.収集試料6点のうち,5点からは Aspergillus が主要菌として分離された.収集試料からは,アフラトキシンは検出されなかったが,2株のアフラトキシン生産菌が分離された.アフラトキシン汚染防止の観点から種菌の開発を行うため,Aspergillus 属の優良菌株2株を選択し,さらに,紫外線照射により,それらの白色変異株を造成・取得した.白色変異株は,アフラトキシン生産菌とは,外観から容易に識別された.これらの変異株には,アフラトキシン生産性は認められず,また,これらを用いて調製した諸味のフォルモール窒素の値は,親株を用いた場合とほとんど変わらなかった.アフラトキシン生産菌の常在地では,麹菌白色変異株の種菌としての利用は有用である.
  • 長嶋  等, 中村 久美子, 後藤 哲久
    原稿種別: 原著
    2002 年52 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    エモジンの抗動脈硬化活性を検討した.本研究では,単球走化性タンパク質(MCP)-1とメタロプロテイナーゼ組織阻害因子(TIMP)-2の分泌に対するエモジンの影響を,血管の平滑筋細胞であるA-10細胞を用いて調べた.両因子とも,動脈硬化の発症に重要な役割を果たしていると考えられている.エモジンは,腫瘍壊死因子-αで誘導されたMCP-1分泌に対し,用量依存的な阻害を示した.50および100μMエモジンに対する暴露は,TIMP-2分泌の顕著な阻害を起こした.これらの結果は,エモジンが動脈硬化を抑制する可能性を示している.さらに,エモジンのエストロゲン様活性を調べた.エモジンは,エストロゲン受容体に対するエストロゲンの結合を阻害した.このことは,エモジンがエストロゲン様活性を持つマイコトキシンであることを示している.エストロゲンもMCP-1の分泌を阻害することから考えると,エストロゲン受容体 がエモジンのシグナル伝達の仲介をしているのかも知れない.
第51回学術講演会要約
特別講演
  • 権藤 眞禎
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 特別講演
    2002 年52 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    我々日本人が過去と現在とでは野生動物との関わりがどのように変遷してきたのか.また,都市と農村地帯との野生動物に対する接し方の違いを見る.そして,私たちが経済的発展と科学の進歩の恩恵を受けて,快適な生活を享受してきた影で自然環境が人間社会から排泄されてきた化学物質で汚染され,その影響が今後もつづき,動物たちの生存を脅かすだけでなく,我々人間の健康にも影響を及ぼす恐れが懸念される. この具体例としてニホンコウノトリ(Ciconia ciconia boyciana)の絶滅した経過と人間社会との関わりを報告する.
  • John GILBERT
    原稿種別: Proceedings of the 51st Meeting Special Lecture
    2002 年52 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    In the European Union the major concerns relating to mycotoxins are from aflatoxins in imported foods, and ochratoxin A and patulin in home-produced commodities. Whilst other mycotoxins such as deoxynivalenol do frequently occur, for example in cereals, they are not presently regulated and not regarded as a high priority. Commodities such as animal feed containing peanut meal, dried figs, pistachios and various spices from specific countries have from time-to-time presented problems and the approach has been to control imports through tough regulatory limits. To back-up these controls the EU has funded a multi-national project which developed and validated several mycotoxin methods for regulatory purposes. HPLC methods with good performance characteristics for aflatoxins, ochratoxin A and patulin at ng/g and sub-ng/g limits in a range of commodities were established. In Europe, ochratoxin A and patulin are two mycotoxins that contaminate home-produced products. Exposure to ochratoxin A has always been of some concern, and whilst there are a range of foodstuffs (cereals, meat products, dried fruit, coffee, wine and beer) that can give rise to that exposure, in the area of home-grown cereals there is the most scope to reduce contamination. In the UK and in Europe, research has focussed on what might be done to prevent or reduce ochratoxin A occurrence in cereals and to develop a HACCP approach to production, identifying and controlling mould growth and toxin formation. Factors such as cereal varieties, farming methods (cultivation and storage), pesticide treatments and the effect of climate are being examined in relation to mould and toxin occurrence. This paper reviews some UK and European funded mycotoxin projects covering the areas indicated above, and presents a view of priorities in the mycotoxin area.
シンポジウム
  • 田中 敏嗣
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 シンポジウム
    2002 年52 巻1 号 p. 43-44
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    Environmental factors in the house have an opportunity to give some kind of human health risk during staying at home. Among important environmental problems, air pollution, water pollution, noise pollution, and UV damage remain to be solved. Because, it is hard to control such factors by ourselves. In our house such as living room, bedroom, and kitchen, we are exposing ourselves to fungal spores, house dust, mycotoxins, and volatile organic chemicals. Most of people do not believe that those may cause allergic symptoms to us. In this symposium, I organized to make a discussion concerning the view of human health hazard in indoor environments. On the basis of the presentation by four panelists, I focussed on the indoor problems with respect to mycological and chemical risk.
  • 戸矢崎 紀紘
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 シンポジウム
    2002 年52 巻1 号 p. 45-55
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    わが国の住宅様式は第一次オイルショック以降エネルギーの省力化から,断熱材,新建材を取り入れた機密性の高い構造の家屋に変化した.その結果,換気量不足,結露の発生から集合住宅,独立住宅を問わず室内の真菌汚染が激増する原因となった.さらに,冷暖房器具の普及から,室内温・湿度の調整はヒトばかりでなく真菌にとっても最適な増殖環境となり,住環境の除菌対策が大きな問題となってきた.室内環境中に生息・浮遊している真菌は外部より流入してくる真菌とハウスダスト中をはじめ室内で増殖する真菌がある1).室内環境真菌の研究は喘息アレルゲン検索を目的に開始されたが,その後,室内環境中に生息・浮遊. している真菌による感染症が大きな問題となってきた.今日,わが国の医療技術の進歩は目覚しく,従来であれば生存できなかったヒトも延命できるようになり,寿命も飛躍的に伸び,高齢化社会を迎えたことから,生活環境中の真菌による日和見感染症やアレルギー性疾患が増加し,日常生活の周辺に常在する微生物も健康維持の上で無視できなくなった.このように室内環境中の真菌相を把握することは日和見感染症やアレルギー疾患などの蔓延に関与する因子を検索する上で重要である.
  • 宇田川 俊一
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 シンポジウム
    2002 年52 巻1 号 p. 57-64
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    健常者にとっては住居は滅多に真菌感染症の場とはならないが,住居内に分布する微小菌類が日和見感染の原因となることは十分考えられる.免疫弱者,とくに高齢者にとって室内環境中の微小菌類の増殖は真菌感染症につながり得る問題であることは確かであろう.わが国での最も重要な真菌症の原因菌は,酵母類を別とすれば,皮膚糸状菌,Aspergillus の数種,ケカビ目の数種とExophiala に属する種のような黒色糸状不完全菌類である.われわれの最近の研究報告の中から,致命的なアスペルギルス及びフザリウム感染入院患者とアスペルギルス症にかかった外来患者の症例を実例として取り上げた. 
  • 杉浦 義紹
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 シンポジウム
    2002 年52 巻1 号 p. 65-67
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    スタキボトリシス真菌症はStachybotrys chartarum による家畜等の中毒症原因菌とされていたが,1993 年米国クリーブランドで多数の幼児に特発性肺出血性疾患が発生した.従来マイコトキシン問題は汚染された穀類や食品を摂取することに起因する中毒症であったが,米国で発生したそれは室内環境中に放出されたS. chartarum 胞子の大量吸引により,出血性毒素が真菌胞子に内在するという新たな真菌中毒症である.わが国においてS. chartarum の住環境中の分布はまだ低いが,生活様式の変化にともない将来的には室内真菌の毒素に起因する疾病に注意を払う必要がある.
  • 八木 正博
    原稿種別: 第51回学術講演会要約 シンポジウム
    2002 年52 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    化学物質過敏症やシックハウス症候群といった室内空気中の化学物質による健康被害について社会的関心が高まっており,厚生労働省の⌈シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会⌉は既にホルムアルデヒド,トルエン,キシレンなど12物質の室内濃度指針値案及び暫定指針値案を策定し,総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を定めた1).個別の指針値案はリスク評価に基づいた値であり,その濃度以下であれば通常の場合はその化学物質は健康への悪影響を及ぼさないと推定された値である.上記検討会は今後も引き続き他の化学物質の指針値案を策定していく予定である.しかし,実際の室内空気には複数の化学物質が存在すること,リスク評価を行うためのデータが不足していること及び指針値を決めていない化学物質による汚染の進行を未然に防ぐ目的からTVOCの暫定目標値も定められた1).ところで,最近の室内空気問題というのは新建材の開発や建築技術の発展などに伴い,種々の化学物質が用いられ,それらが室内空気中に揮散され,さらに住居の気密化が進んだことにより室内空気中の有機化学物質濃度が高まったために問題が生じてきたと考えられている.家具や電気製品などの家庭用品についても種々の化学物質が用いられており,これらも有機化学物質の発生源になっていると推定されている.今回,室内空気中化学物質の濃度指針値案が策定されたことにより,建築物や家庭用品等の関係者が室内空気中化学物質の濃度を下げる工夫をすることが期待され,今まで原因がわからず,健康被害があった人々の多くが健康を取り戻すことができると思われる.さらに調査研究が進み,有害な化学物質の発生の少ない,地域の風土に適した21世紀型住居が建てられ,その住居に適した住み方が検証されることにより,室内空気中化学物質による健康被害で悩む人が減ることが期待される.
資料と情報
  • 山本 勝彦, 中島 正博
    原稿種別: 資料と情報
    2002 年52 巻1 号 p. 75-85
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    粒状落花生及びピスタチオナッツのアフラトキシン(AF)検査のためのサンプリング法の改善について検討した.現在実施されているロット当たりの1検体につき1 kg のサンプルを,小粒の落花生では1検体につき剥き実1 kg で3 サブサンプル(非AF 汚染国からの輸入:全3 kg)及び5 サブサンプル(AF 汚染国からの輸入:全5 kg)に,また大粒の落花生ではそれぞれ2 kg で3 及び5 サブサンプル(全6 及び10 kg)にサンプル量を増やし,全てのサブサンプルがAF 不検出の時(AFB1 ≤ 10 ppb),ロットを受け入れる方法(Multi-subsampling plan)を考案した.さらにこの方法について,Whitaker の負の二項分布理論を用いて,消費者リスク,生産者リスク及び減毒効果について検討した.その結果3 サブサンプル法では,消費者リスクが3.5%,生産者リスクが6.1%及び検査後の減毒率は56.2%,また5サブサンプル法では消費者リスクが2.0%,生産者リスクが9.3%及び減毒率は66.6%と推計された.ピスタチオナッツでは,既にイラン産について1 ロット8 サブサンプル法が実施されているので現行どおりとする.しかし,輸入時の検査と地方自治体でのAF 再検査においてサンプリング法の整合性を図るため,全ての食品について地方自治体での小サンプルによる監視検査では検査結果の及ぶ範囲を監視現場の対象となった小規模ロットにとどめる.多量の在庫ロットについてAF 検査を実施する場合は,輸入時と同様にMulti-sub-sampling plan を実施し,1 サブサンプルの及ぶロットの範囲を2 トン程度とする.その際,AF を検出した場合は,そのサブロットにつき検出すると判定する.
  • 伊藤 嘉典
    原稿種別: 資料と情報
    2002 年52 巻1 号 p. 87-93
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    日本のアフラトキシン(AF)分析法である環食128 号法の問題点として,多量の溶媒を必要とすること,ならびに分析時間に長時間を要することが挙げられる.特に,シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるクリーンアップにおいて著しく,加えてクリーンアップ効果の悪さが指摘されている.そこで,これらの点を改良することを目的として,2方向展開薄層クロマトグラフィー,薄層プレート上でクリーンアップと定量を行う方法(薄層クリーンアップ法)を修正環食128 号法に取り入れた.AF の自然汚染が確認されたレンズ豆,キビ粉, ソバ粉, ピーナッツを試料とし,従来のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによるクリーンアップ法(カラムクリーンアップ法)とクリーンアップ効果,使用溶媒量,処理時間について比較,検討した結果, 薄層クリーンアップ法を行った全ての試料でカラムクリーンアップ法を用いたものよりも高い測定値を示した.AF 非汚染試料を用いたAFB1 の添加回収率(%,N= 3)は薄層クリーンアップ法とカラムクリーンアップ法では, それぞれ91.3%-96.6%と88.6%-93.6%であった.また,1試料当たりの薄層クリーンアップ法とカラムクリーンアップ法で使用した溶媒量は,それぞれ50.5 ml と652.5 ml,同様に処理時間は,おのおの77分-87分と102分-125分であった.
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