抄録
食品の安全性向上を目的として,アフラトキシン,パツリン,オクラトキシン,シトリニン,デオキシニバレノール,フモニシン,ゼアラレノン等主要なマイコトキシンについて種々の研究を行った.アフラトキシン,パツリン,オクラトキシン,シトリニンについては,定量と確認を含んだ回収率,感度,精度,選択性の良好な分析法を開発した.これらの方法を用いて,国内のマイコトキシン汚染調査を行った.その結果,種実類,穀類,香辛料,乳製品からアフラトキシンが検出され,そのうちの一部からは,規制を越えるアフラトキシンが検出された.国内に流通するソバ,ハトムギ,黒糖等にアフラトキシン汚染があることを初めて明らかにした.物理的,化学的,生物的な手法によるアフラトキシンの減少について検討した.純粋なアフラトキシンは,減少させることが可能であったが,食品中のアフラトキシンを減毒することは,困難であった,パツリンにおいては,市販リンゴジュース,パツリン汚染があることを初めて明らかにした.また,国産リンゴにパツリン汚染があることを見出し,日本国内で,パツリンの自然汚染がおきていることが判明した.穀類,コーヒー,カカオ,果実加工品からオクラトキシンが検出され,1μg/kg未満の低濃度の汚染が多かったが,20μg/kgを超える汚染もあった.シトリニンは,穀類から検出され,オクラトキシンとの共汚染が認められた食品があった.マイコトキシンに関する分析法の開発,汚染調査,規制が食品の安全性向上に重要であると考えられた.