マイコトキシン
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「フザリウムトキシンの今」
高速液体クロマトグラフィー質量分析法によるフザリウムトキシン分析に関する最新の知見
中川 博之
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2014 年 64 巻 1 号 p. 55-62

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抄録
  小麦および大麦を汚染する主要フザリウムトキシン5種(デオキシニバレノール,ニバレノール,T-2トキシン,HT-2トキシン,ゼアラレノン)について,高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)による一斉分析法を開発し,12機関における室間共同試験による妥当性確認を行った.フザリウムトキシンの一斉分析にはこれまで多くの機器分析手法が報告されているが,その多くは室間共同試験による妥当性確認がなされていない.また,LC-MS/MSによるカビ毒分析においては抽出効率のばらつきや夾雑成分によるイオン化への影響がしばしば問題視されるが,本手法では内部標準物質による補正を行うことでこれらの影響を低減できていると思われる.タイプAトリコテセン,タイプBトリコテセン,及びゼアラレノンを対象とする室間共同試験による妥当性確認がなされた一斉分析法は,本手法が国内外を通じて最初の例である.一方,フザリウムトキシン由来の新規配糖体(マスクドマイコトキシン)の検出を目的として,高分解能LC-MS(LC-Orbitrap MS)による精密質量を指標としたスクリーニングを行った.その結果,玄麦試料においてタイプBトリコテセン(ニバレノール,フザレノン-X)由来,またトウモロコシ粉末試料においてタイプAトリコテセン(T-2トキシン,HT-2トキシン,ネオソラニオール,ジアセトキシスシルペノール,モノアセトキシスシルペノール)由来のモノグルコシド体を検出した.T-2トキシン,HT-2トキシンに関してはジグルコシド体も検出された.これらの結果から,マスクドマイコトキシンがデオキシニバレノールやゼアラレノンのような特定のマイコトキシンのみではなく,他のフザリウムトキシンについても存在することが明らかになった.
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© 2014 日本マイコトキシン学会
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