2020 年 70 巻 1 号 p. 7-13
ジクロルボス-アンモニア(DV-AM)法は,アフラトキシン(AF)生産かびを簡便かつ高感度に検出できる可視検出法である.多くの国において,AF汚染はナッツ類で頻繁に報告されている.本研究では,輸入生ナッツ(南アフリカ産ピーナッツ,オーストラリア産マカダミアナッツ,イラン産ピスタチオナッツ, ケニア産 マカダミアナッツ,カリフォルニア産アーモンドナッツ,ベトナム産カシューナッツ,トルコ産ヘーゼルナッツ,中国産かぼちゃの種,ブルガイア産ひまわりの種,アメリカ産クルミ)を対象に,AF生産菌の有無をDV-AM法を用いて調べた.その結果,DV-AM法において,南アフリカ産ピーナッツとオーストラリア産マカダミアナッツから赤色コロニーが検出され,それらのカビの代謝産物を薄層クロマトグラフィーで分析したところ,南アフリカ産ピーナッツから単離されたカビは主としてAFB1を生産し,AFG1の生産は見られなかった.一方,オーストラリア産マカダミアナッツから単離されたカビは,主としてAFB1及びAFG1を生産した.さらに,単離されたカビについてカルモジュリン遺伝子のシーケンスを行ったところ,ピーナッツからのカビはAspergillus flavusであり, マカダミアナッツからのカビはAspergillus parasiticusであると同定された.以上のことから,DV-AM法は輸入食品中のAF生産菌の混入を検出するのに有効であることが明らかとなった.DV-AM法は,作物の収穫,分別,洗浄,食品加工,輸送など,フードチェーンの様々な工程において重要管理点を決定するために極めて有用な手段になることが示唆された.