2020 年 70 巻 1 号 p. 1-5
トリコテセン生合成の制御メカニズムに関する知見を得るため,理研および名古屋大学においてFusarium graminearumの分子遺伝学的解析を行った.まず,F. graminearum細胞内で様々な転写レベルを発揮するAspergillus nidulans由来プロモーターを調製した.続いてこれらのプロモーターを用いてトリコテセン生合成遺伝子の発現に必須な転写因子Tri6pの局在を調べた.緑色蛍光タンパク(EGFP)とTri6内の推定核移行シグナル(NLS)とを融合しA. nidulans TEF1αプロモーター制御下で発現させるとEGFP蛍光が核において明確に確認されたことからNLSの機能性が示された.さらに,トリコテセン生産誘導に関しスクロースが誘導因子として働くことを見出した.このスクロースやトリコテセン生産制御パターンを変動させる低分子化合物の作用機序解析をもとにTri6発現の新しいモデルを構築している.これらのツールを用いたさらなる分子遺伝学的解析によりトリコテセン生合成制御メカニズムが明らかになることが期待される.