マイコトキシン
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アレルギー疾患の増大と衛生環境の変化:サル花粉症研究の視点から
中村 伸
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2000 年 50 巻 2 号 p. 101-104

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抄録

スギ花粉症などの即時型アレルギー反応は,抗原(スギ花粉症では,スギ花粉中に含まれる塩基性蛋白質のCryj.IならびにCryj.IIが抗原となる)に対する特異的IgE抗体の産生が原因となる免疫異常で,近年こうしたアレルギー疾患が急増し,全人口の約20%が何らかのアレルギー症に悩まされている.アレルギー疾患は,欧米や日本等の"先進国"で多い事から"文明病"的位置づけにあるが,野生動物のサル類でもスギ花粉症が見られる.我々は準野性状態で飼育されているニホンザルの中に,ヒトと同様なスギ花粉症を見い出し,それを契機にサルモデル系でのIgE産生応答やアレルギー反応に関する研究を進めている.その過程で,ヒトの場合,過去数十年間の衛生環境の変化(原虫や寄生虫感染の低下など)が細胞性免疫応答(Th1)/液性免疫応答(Th2)のインバランス(Th2亢進)を惹起し,抗原特異的IgE抗体の産生亢進→花粉症・アレルギー疾患の増大要因となっていることを明らかにした.

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