抄録
血中catecholamine (CA)は血液・脳関門により髄液中には通常移行しにくく髄液CAが中枢神経系のCAの動きを反映する可能性がある.今回入院高血圧患者,正常血圧者,脳血管障害患者について髄液中CA濃度を測定した. 1)未治療本態性高血圧症と正常血圧者では髄液norepinephrine (NE)濃度は血圧値(収縮期r=0.56拡張期r=0.58)脈拍数(r=0.48)血漿NE濃度(r=0.62)との間に有意の正の相関を示した. 2)髄液NE濃度は本態性高血圧症(12例, 106±12pg/ml)脳硬塞(8例, 209±58)脳出血(7例, 201±54)各群で正常血圧者(11例, 69±6)に比べ有意の上昇を認めた.一方髄液epinephrine濃度は全ての群で測定限界以下(25pg/ml)の低値を示す症例が多かつた. 3)脳血管障害患者でも髄液NE濃度は血漿NE濃度と相関を示したが,血圧値とは相関を認めなかつた. 4)褐色細胞腫患者の髄液NE濃度は血漿NE濃度高値にもかかわらず低値を示した.髄液CAの由来は明らかではないが,本態性高血圧症における髄液NE濃度の上昇は,中枢神経系におけるNEの放出増大と関連し,さらに末梢交感神経系のactivityの亢進ないし血圧上昇と関係している可能性がある.