農研機構研究報告
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総説
土壌有機物と農業生産との関係についての総説
松﨑 守夫
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2021 年 2021 巻 6 号 p. 1-9

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抄録

土壌有機物は不均一な有機物の混合物であり,その半分は有機炭素によって構成される.土壌有機物は,土壌に還元された有機物が土壌微生物によって分解されたものである.土壌有機物は土壌の陽イオン交換容量を増加させる.また,団粒形成に寄与し,土壌の排水性,保水性を向上させる.土壌微生物は土壌有機物を分解して増加するため,土壌有機物が多いほど,土壌微生物の保持するバイオマス窒素が増加する.バイオマス窒素は,地力窒素と関係が深いとされている.ただ,バイオマス窒素の増加にともなって,土壌有機物量は減少すると考えられる.土壌有機物量は,土壌へ供給される有機物量と,土壌微生物による分解量によって決定される.土壌への有機物供給量を増加させる処理としては焼畑,堆肥連用などがある.土壌有機物の分解を促進する処理としては水田の畑転換,ダイズ作などがある.従って,水田転換畑におけるダイズ作では,著しく土壌有機物の分解が促進されると考えられる.地力窒素を利用しつつ,土壌有機物を維持するためには,土壌微生物による分解量以上に,土壌へ有機物を供給する必要がある.そのためには,堆肥などの有機物を連用することが有効と考えられる.

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