2021 年 2021 巻 7 号 p. 21-28
黒星病と黒斑病はニホンナシ栽培において最も重要な病害であり,抵抗性品種の育成が求められている.‘ほしあかり’は,1997 年に314-32(‘巾着’× ‘豊水’)に‘あきあかり’を交雑し,育成した実生から選抜した,黒斑病と黒星病に複合抵抗性を示す,やや早生のニホンナシ品種である.2007 年からナシ第8 回系統適応性検定試験に供試し,2014 年 2 月の果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2015 年6 月19 日に第24373 号として種苗法に基づき品種登録された.樹勢はやや弱く,枝梢の発生は中程度.短果枝の着生は中程度,えき花芽の着生はやや多い.開花期は‘豊水’に近く,‘幸水’より早い.S 遺伝子型はS5Sk で,いずれの主要品種とも和合性を示す.若木の収量は‘豊水’より少なく,‘幸水’程度である.成熟期は‘幸水’より10 日程度遅く,‘豊水’より7 日程度早い.果実は円または円楕円形を呈し,大きさは400g 程度で‘幸水’と同程度で,‘豊水’より小さい.果肉は硬度が4.6 ポンドで‘幸水’より軟らかく,糖度は13.5%で‘幸水’,‘豊水’より高く,pH は5.2 程度で酸味が少なく,食味は総じて‘幸水’,‘豊水’と同等以上である.果実の日持ち性は10 日程度で‘幸水’よりやや長く.‘豊水’程度である.黒星病・黒斑病複合抵抗性を示すため,殺菌剤散布回数を削減できる可能性があり,普及が期待される.