農研機構研究報告
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2021 巻, 7 号
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表紙・目次・編集委員会・奥付
原著論文
  • 喜多 正幸, 根角 博久, 國賀 武, 中嶋 直子, 吉岡 照高, 太田 智, 瀧下 文孝, 中野 睦子, 小川 一紀, 吉田 俊雄, 矢野 ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 1-8
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    ‘オーラスター’は1994 年に農林水産省果樹試験場興津支場(現(国)農研機構果樹茶業研究部門カンキツ研究領域)において,カンキツ属とカラタチ属の属間雑種H・FD −1 に‘晩白柚’を交配して育成された品種である.CTV に対して強い抵抗性を有し,機能性成分であるオーラプテンを果肉・果皮共に高含有するため加工用品種・育種素材として有用であると評価,選抜され,2012 年5 月24 日付けで,種苗法に基づき,第20789 号として品種登録された.‘オーラスター’の樹勢は強く,樹姿は直立性である.葉は大きく,ほとんどが三出複葉となる.果実は扁球形で育成地では概ね400 ~450g で平均420g 程度である.果皮は黄橙色,厚さは14mm 程度で,剥皮性は難である.果肉は黄色で比較的柔らかく,果汁量は中程度である.クエン酸含量が高く,酸味が強い.カラタチ特有の臭気はほとんどない.そうか病には強く,かいよう病にはやや弱いと考えられている.また,CTV に対して強い抵抗性を有しており,単胚性のため,CTV に対する抵抗性品種育成のための育種親としての利用が可能である.果肉・果皮共に食用可能なカンキツ品種としては高濃度のオーラプテンを含有する.‘オーラスター’は果実の成熟が3 月中下旬となることから,冬季に温暖な地域での栽培が望ましい.

  • 喜多 正幸, 根角 博久, 國賀 武, 吉岡 照高, 中嶋 直子, 太田 智, 瀧下 文孝, 野々村 睦子, 吉田 俊雄
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 9-19
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    ‘はるひ’は1991 年に農林水産省果樹試験場興津支場(現(国研)農研機構果樹茶業研究部門カンキツ研究拠点)において,オレンジタイプのカンキツ興津46 号を種子親とし,‘阿波オレンジ’を花粉親として作出した品種である.2001 年よりカンキツ第9 回系統適応性・特性検定試験にカンキツ興津55 号として供試した.同試験には28 の公設試験研究機関が参加し,その結果,ヒュウガナツ様の芳香と鮮やかな果皮色を持ち,かつヒュウガナツに比べ高糖度で収穫期が1 か月以上早いこと,剥皮性に優れること等が評価され新品種候補にふさわしいとの合意が得られた.これを受け,2009 年10 月13 日に品種登録出願を行い,2011 年3 月18 日付けで種苗法に基づき第20679 号として品種登録された.本品種の樹勢は中で,樹姿は開張となる.枝梢は太く,長い.葉は紡錘形で葉身の幅は広い.かいよう病とそうか病に強く,カンキツトリステザウイルス(CTV) によるステムピッティングの発生は中程度である.果実は150g 程度で,扁球形である.果皮は黄橙色であり,果面はやや滑らかである.果皮厚は3mm 程度でやや薄く,剥皮は比較的容易である.成熟期(2 月下旬)における果汁の糖度は13% 程度と高く,酸度は1.0g/100mL 程度になる.種子数は平均14 粒程度とやや多い.成熟期は九州地方では1 月下旬以降,関東・東海地方では2 月下旬以降と評価されているため,農林水産省の栽培に適する自然的条件に関する基準に従い果実の寒害を避けるため冬期の最低気温が−3℃以下とならない温暖な地域での栽培が望ましい.また,着果が過多になると小玉傾向になるほか,樹が衰弱し,枯れ込むことがある.中程度の隔年結果性があることから,適正な着果管理に努める必要がある.

  • 齋藤 寿広, 澤村 豊, 髙田 教臣, 壽 和夫, 西尾 聡悟, 平林 利郎, 佐藤 明彦, 正田 守幸, 加藤 秀憲, 寺井 理治, 樫村 ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 21-28
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    黒星病と黒斑病はニホンナシ栽培において最も重要な病害であり,抵抗性品種の育成が求められている.‘ほしあかり’は,1997 年に314-32(‘巾着’× ‘豊水’)に‘あきあかり’を交雑し,育成した実生から選抜した,黒斑病と黒星病に複合抵抗性を示す,やや早生のニホンナシ品種である.2007 年からナシ第8 回系統適応性検定試験に供試し,2014 年 2 月の果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2015 年6 月19 日に第24373 号として種苗法に基づき品種登録された.樹勢はやや弱く,枝梢の発生は中程度.短果枝の着生は中程度,えき花芽の着生はやや多い.開花期は‘豊水’に近く,‘幸水’より早い.S 遺伝子型はS5Sk で,いずれの主要品種とも和合性を示す.若木の収量は‘豊水’より少なく,‘幸水’程度である.成熟期は‘幸水’より10 日程度遅く,‘豊水’より7 日程度早い.果実は円または円楕円形を呈し,大きさは400g 程度で‘幸水’と同程度で,‘豊水’より小さい.果肉は硬度が4.6 ポンドで‘幸水’より軟らかく,糖度は13.5%で‘幸水’,‘豊水’より高く,pH は5.2 程度で酸味が少なく,食味は総じて‘幸水’,‘豊水’と同等以上である.果実の日持ち性は10 日程度で‘幸水’よりやや長く.‘豊水’程度である.黒星病・黒斑病複合抵抗性を示すため,殺菌剤散布回数を削減できる可能性があり,普及が期待される.

  • 齋藤 寿広, 澤村 豊, 髙田 教臣, 壽 和夫, 西尾 聡悟, 平林 利郎, 佐藤 明彦, 正田 守幸, 加藤 秀憲, 寺井 理治, 樫村 ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 29-37
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    ‘なるみ’は,1996 年に269-21(‘豊水’× ‘おさ二十世紀’)に162-29(‘新高’× ‘豊水’)を交雑し,育成した実生から選抜した中生の自家和合性を有するニホンナシ新品種である.2007 年からナシ第8回系統適応性検定試験に,ナシ筑波57 号として供試し,2015 年2 月の果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2016 年7 月6 日に第25276 号として種苗法に基づき品種登録された.系統適応性試験の結果では,樹勢および枝梢の発生程度は中,短果枝の着生はやや多く,えき花芽の着生は中程度である.開花期は‘豊水’と同時期である. S 遺伝子型はS4smS5 で,自家和合性を示す.自然受粉条件での結実率も高く,受粉作業を省略出来ると考えられる.一方, 本品種の花粉は‘幸水’等S4S5 S1S5 の遺伝子型の品種と交雑不和合性を示す.成熟期は9 月上旬で‘豊水’と同時期である.黒斑病には抵抗性,黒星病にはり病性である.果実は円形を呈し,大きさは532g で‘豊水’より大きい.果肉は硬度が4.7 ポンド,糖度は12.9%でいずれも‘豊水’と同程度,pH は4.9 で‘豊水’より高く酸味が少ない.心腐れの発生は‘豊水’と同程度に少なく,みつ症の発生は‘豊水’より少ない.果実の日持ち性は10 日程度で‘豊水’と同程度である.自家和合性を有する,人工受粉作業を省略可能な品種として普及が期待される.

  • 齋藤 寿広, 髙田 教臣, 澤村 豊, 西尾 聡悟, 平林 利郎, 佐藤 明彦, 加藤 秀憲, 尾上 典之, 内田 誠
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 39-46
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    ‘ぽろすけ’は, 2004 年に550-40[290-5(‘森早生’× ‘改良豊多摩’)]× ‘国見’)に‘丹沢’を交雑し,育成した実生から選抜した早生の易渋皮剥皮性を有するニホングリ品種である.2009 年からクリ第7 回系統適応性検定試験に,クリ筑波41 号として供試し,2016 年2 月の果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2018 年5 月29 日に第26828 号として種苗法に基づき品種登録された.系統適応性検定試験の結果では,樹勢の強弱は中,樹姿は直立と開張の中間である.雌花の満開日は6 月3 日で‘丹沢’や‘ぽろたん’と同時期である.収穫盛期は9 月2 日であり,‘丹沢’と同時期で,‘ぽろたん’より早い.若木の収量は‘丹沢’や‘ぽろたん’と同程度である.双子果,腐敗果,虫害果の発生率は‘丹沢’,‘ぽろたん’と同程度,裂果の発生率は‘丹沢’と同程度で,‘ぽろたん’より 高い.果実重は約19g で‘丹沢’,‘ぽろたん’より小さい.果実の揃いは良好で,比重は‘丹沢’,‘ぽろたん’と同程度である.果肉の色は黄色で肉質はやや粉質,甘味や香気は中程度であり,食味は‘丹沢’や ‘ぽろたん’と同程度である.渋皮剥皮性は‘ぽろたん’と同様に容易である.また,‘ぽろたん’と交雑和合性を示すため,両品種を植栽する園地では渋皮剥皮が容易な果実のみ生産可能である.‘ぽろすけ’は渋皮剥皮が容易な果実の供給期間を拡大可能な品種として普及が期待される.

  • 佐藤 明彦, 山田 昌彦, 三谷 宣仁, 河野 淳, 伴 雄介, 上野 俊人, 白石 美樹夫, 尾上 典之, 岩波 宏, 東 暁史, 吉岡 ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 47-61
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    ‘グロースクローネ’は,1998 年に‘藤稔’に‘安芸クイーン’の交雑を行い,そこから得た実生から選抜された,紫黒色の大粒ブドウである.2010 年からブドウ第13 回系統適応性検定試験に供試し,2017 年2 月の果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2020 年8 月14 日に第28086 号として種苗法に基づき品種登録された.樹勢は強い.発芽期は‘巨峰’より1 日,開花期は‘巨峰’より2 日遅い.満開~満開3 日後と満開 10 ~15 日後にジベレリン25ppm に花(果)穂を浸漬処理することにより無核果生産できるが,安定した無核果生産にはストレプトマイシンの利用が望ましい.花穂整形労力は‘巨峰’並み,摘粒労力は‘巨峰’より少ない.果実成熟期は‘巨峰’とほぼ同時期であり,‘ピオーネ’より4 日程度早い.果粒重は19g 程度,糖度は18.4% 程度,酸含量は0.46g/100ml 程度である.裂果性は‘巨峰’や‘ピオーネ’よりやや多い.無核栽培における含核数は0.10 個/ 粒で,‘巨峰’と同程度である.果皮色は紫黒色で,気温が高い夏秋季の西南暖地においても‘巨峰’や‘ピオーネ’と比較して安定して良好な着色が得られる.高温下でも着色が容易なため,‘巨峰’や‘ピオーネ’において着色不良が発生しやすい西南暖地での普及が見込まれる.

  • 岩波 宏, 馬場 隆士, 守谷 友紀, 阪本 大輔, 花田 俊男
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 63-72
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    国内産リンゴ加工原料の需要拡大に応えるために,カラムナータイプのリンゴ樹を用い,年間の労働時間を6 割以上削減して毎年反収で8t が実現可能か検討した.毎年安定した収量を確保するためには,カラムナータイプリンゴの特性である隔年結果性を利用し,無摘果で1 果そうに3 個以上結実させる過着果を樹列毎に隔年で交互に繰り返す隔年交互結実法が有効であった.570 本/10a の密植条件であれば,園地の半分の樹列の着果だけでも,反収で10t 程度になると推定された.着果量が増えると果実品質は低下するが,過着果させても果実重で150g,糖度で10ºBrix は維持していた.大量に着果した果実を樹冠下に広げたネットに落として回収する方法で,収穫時間を削減することも可能であった.着果管理,着色管理を省略し,収穫時間を短縮することで,年間の労働時間を6 割以上削減できると推定された.本研究で提示する省力的な管理で反収を増やす栽培方法は,加工専用のリンゴを生産する手法としては極めて有用であると考えられる.

  • 千秋 祐也, 中島 育子, 土師 岳, 佐藤 明彦, 伊藤 隆男
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 73-80
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    国内における生食用ブドウあるいは醸造用ブドウ栽培では,「テレキ 5BB」(Vitis berlandieri × Vitis riparia),「グロワール」(V. riparia),「101-14」 (V. riparia × Vitis rupestris) などが代表的な台木品種として使用される.一部の台木母樹に, 新種ウイルスの感染事例が認められたことから, 熱処理と茎頂培養の併用による無毒化個体の作出を行った.得られた16 ~18 個体について, 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により一次選抜を行った.選抜した6 個体ずつを混合して,現時点で最も信頼性の高い新たな手法である次世代シーケンス解析を用いたウイルス診断を行った.その結果,「テレ キ5BB」の一部の個体でウイロイドの陽性が認められた他は, 全ての供試個体においてウイルス感染は認められなかった.それぞれの2 ~6 個体からはいずれのウイルス・ウイロイドも検出されず, 無毒化台木母樹としての利用が期待で きる.

  • 新井 朋徳, 井上 広光, 外山 晶敏, 須崎 浩一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 81-87
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
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    短梢せん定栽培のブドウ‘シャインマスカット’の光反射シートマルチを利用した減農薬防除体系(減農薬区),シート無被覆の慣行防除体系(慣行区)と殺虫剤および殺菌剤無散布体系(無散布区)において発生した潜在害虫による果実と葉,および当年枝の被害を調査した. トリバ類による被害果房率とブドウスカシクロバによる被害葉率は,無散布区では他の試験区よりも大きくなったが,減農薬区と慣行区で差が認められなかった. また,冬季に当年枝を除去する短梢せん定園では,枝幹害虫による翌年の当年枝の被害が無散布区を含む全試験区においてもほとんど発生しなかった. このことから,短梢せん定‘シャインマスカット’において,光反射シートマルチを利用した減農薬防除体系では,ブドウの潜在害虫による実害が発生する可能性は低いと考えられた.

  • 新井 朋徳, 井上 広光
    原稿種別: 研究論文
    2021 年2021 巻7 号 p. 89-93
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2022/02/01
    研究報告書・技術報告書 フリー HTML

    殺虫剤無散布カキ圃場におけるヒメクロイラガ幼虫によるカキ食害葉数を調査した. 捕食者不在のヒメクロイラガ1 集団あたりの食害葉数は211.1 葉となったが,捕食性天敵ヒラタアトキリゴミムシ幼虫が認められたヒメクロイラガ1 集団あたりの食害葉数は47.2 葉となり,捕食性天敵不在集団と比べて被害が4 分の1 未満に抑制された.

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