2021 年 2021 巻 8 号 p. 185-189
地震と津波,原発災害の影響を受けた福島県浜通り地域において,風評の対象になりにくい切り花の先端技術実証プロジェクトを実施し,トルコギキョウの周年生産を可能とする新たな生産技術を開発した.閉鎖型育苗装置による短期間で均質な苗生産,軽労化と効率生産を可能とするNFT 水耕栽培とその病害対策,省力化と熟練生産者レベルのハウス管理を実現するトルコギキョウの光合成モデルを核とした複合環境制御システム,冷却と加湿の分離が可能なダクト式パッドアンドファン,蕾収穫を可能とする着色ムラ防止剤などである.これらの技術を組み合わせることで,同地域の慣行が年1 作であったものを,作付け開始時期を問わない年3 作の栽培を可能にした.この技術を導入した複数のハウスでの栽培による出荷時期を分散させた周年栽培体系を設計し,実証した.新たな担い手による当技術体系の普及と,個別技術の慣行土耕栽培への適用が期待される.