カンキツ栽培では,果汁中の酸度が1% を下回ることが収穫時期の目安として用いられている.このため,高い酸度は収穫時期の遅れをもたらし,出荷・販売計画に影響する.そこで本研究では,適期に収穫するために低い酸度の果実を生産する技術を開発することを目的とし,3 種類のカンキツ(‘青島温州’,‘不知火’および‘せとか’)を用いて,発芽前から開花期まで透明のポリエチレンシートで樹冠を覆ったときの着花性および収穫時の果実品質に及ぼす影響を調査した.調査されたすべての品種で,樹冠被覆により発芽日および開花盛期は早まった.樹冠被覆が収穫時の果実重に及ぼす効果は品種によって異なり,‘青島温州’および‘せとか’では被覆あり区で1 果実の重量が高く,‘不知火’では樹冠被覆の有無で果実重に差はなかった.果汁中の酸度は‘,青島温州’において被覆の有無で差はなかったが‘,不知火’および‘せとか’において被覆あり区で被覆なし区よりも有意に低かった.このことから,樹冠被覆は‘不知火’および‘せとか’における酸の低減に有効であることが示唆された.