2022 年 43 巻 2 号 p. 56-65
シアネートエステル樹脂の靭性向上のため,ビスフェノールA ジシアネートエステル(BADCY)を骨格構造の異なる2 種のメソゲンエポキシにより変性した。得られた硬化物は,エポキシ変性に伴うTg の低下を抑制しつつ,汎用ビスフェノールF 型エポキシ(DGEBF)変性と同程度あるいは高い破壊靭性を示した。FT-IR 解析を行ったところ,エポキシ骨格構造や変性量によって形成されるネットワークの構造が異なることが示された。 特にシアネート同士の反応によるトリアジン環生成量は大きく変化し,これらはガラス状領域における貯蔵弾性率及び破壊靭性値にも影響した。変性量を0.2 から0.3 当量に増加させると,DGEBF 変性とターフェニル型メソゲンエポキシ変性硬化物の臨界応力拡大係数(KIC)は低下したが,テレフタリリデン型メソゲンエポキシ(DGETAM)変性硬化物では低下しなかった。破断面観察の結果,DGETAM 変性硬化物はクラック先端付近で大きな塑性変形が確認された。DGETAM 変性量の増加に伴ってKIC が低下しなかったのは,メソゲン骨格エポキシによる塑性変形能の向上や,剛直なトリアジン環の生成量の減少による低弾性化のためと考えられる。