抄録
FRP は金属に比べ軽くて強いという優れた特長を有しており,バスタブといった用途から航空機等の用途まで広範囲に渡り使用されている。その多くは不飽和ポリエステル樹脂(UPE)をマトリックスとしたものであるが,近年フェノール樹脂をマトリックスとしたフェノールFRP(以下,Ph-FRP)の利用が盛んになってきている。その理由として,Ph-FRP は極めて燃えにくく,燃焼時の煙の発生量も少なく有毒ガスをほとんど排出しない等の優れた特長を有しているためである。これまでに航空機のラバトリー,鉄道車両においては窓枠や天井部材等で既に実用化されており,英国では船舶のキッチン周りにも用いられている材料である1)。近年注目されているPh-FRP であるが,製造方法のほとんどはハンドレイアップ法(以下,HLU)が用いられている。この製法は,型に賦形したガラス繊維などの強化材の上に樹脂を人手で含浸する方法であり,特長としては少量多品種生産に適した成形法である。しかしながらこの製法は手作りのため,2 ~3 個/時間程度が限界であり,ロットの製品数が多くなると必ずしも適した成形法とは言い難い。一方,シートモールディングコンパウンド法(以下,SMC)は専用の装置にて原料SMC シートを作成すれば,その後は5 分/個程度のサイクルで加熱加圧成形し製品を得ることができるため,大ロット製品には非常に適した成形法の一つである。しかしながら,これまでのフェノールSMC(以下,Ph-SMC)の検討結果を顧みると,長期的な反り・変形といった問題が発生し,実用化まで至っていないのが現状である。そこで,本研究では,主にPh-SMC の課題であった長期的な反り・変形を改善すべく検討を行い,従来より広く使用されている不飽和ポリエステルSMC(以下,UPE-SMC)と比較検討を行った。そこで,本研究では,主にPh-SMC の課題であった長期的な反り・変形を改善すべく検討を行い,従来より広く使用されている不飽和ポリエステルSMC(以下,UPE-SMC)と比較検討を行った。