2017 年 38 巻 3 号 p. 128-135
ポリフェニレンスルフィドなどの特殊エンプラは,成形性と耐熱性に優れ,モータやインバータなどの絶縁部材に活用されている。しかし,一般的に特殊エンプラは,汎用エンプラに比べて高コストであることが課題となっている。著者らは,低コストと耐熱性を両立するために,熱処理前に成形性を有し,成形後の熱処理による後架橋で耐熱性が向上する絶縁材料の開発を進めている。本研究では,汎用エンプラのフェノキシ樹脂の高耐熱化を目的に,熱硬化性材料のビスマレイミドを添加し,示差走査熱量測定(DSC)による反応挙動と,熱重量測定を用いた小澤-Flynn-Wall 法から求めた耐熱指数による化学的耐熱性を評価した。DSC 及びIR から,フェノキシ樹脂中のビスマレイミドは,フェノキシ樹脂と反応をすることが示唆された。また,熱処理前のビスマレイミド添加フェノキシ樹脂のガラス転移温度と,フェノキシ樹脂とビスマレイミドの反応発熱ピーク温度との差が十分に大きく,ビスマレイミド添加フェノキシ樹脂は,熱成形後の熱処理による後架橋が可能になると考えられた。さらに,適量のビスマレイミド添加でフェノキシ樹脂の耐熱性は向上することを明らかにした。