2021 年 2 巻 J2 号 p. 67-78
列車が軌道上を繰り返し走行すると,荷重により線路のゆがみである軌道変位が徐々に大きくなる.そこで通常は,定期的に軌道形状を検測し,大きな軌道変位があると軌道保守を行う.しかし稀に軌道変位が局所的かつ急激に進む急進が発生することがある.よって,列車の走行安全性を確保するため,こうした急進が発生する予兆を検知し,発生前に保守を行う予防保全が求められている.本研究では,軌道変位と保守実績の履歴データに対してクラスタ分析を適用することにより,大きな軌道変位の発生可能性が高い箇所を事前把握するモデルを構築した.また,本モデルを軌道検測の都度適用し,前回の軌道検測時と比べて注意を要するクラスタの中心に接近した箇所やクラスタ間を移動した箇所を抽出することで,注意すべき箇所を事前に検知できる可能性を示した.