抄録
携帯電話などのモバイル電子機器では, 多機能高性能化と小型薄型化の両立のため, 薄い半導体チップを薄いダイボンディングフィルムで積層したスタックドチップサイズパッケージの搭載が増加すると予想され, ダイボンディングフィルムの信頼性要求レベルは, ますます高くなると推測される。この高信頼性ダイボンディングフィルムを開発するために, アクリルゴム/エポキシ樹脂系で反応誘起相分解による相分離構造の制御を行い, 最適な物性を発現する相分離構造の探索及び設計を行っている。本研究では, 硬化剤を選定して, 相分離構造の異なるフィルムを作製し, その引張り特性及び接着性を評価した。位相差顕微鏡の観察で, 約2μmのドメインが観察されたフィルムは, 高伸び (400%) で破断強度が高く (20MPa), はく離強度は非常に高かった (1.4kN/m) 。一方, 相構造が観察されなかった透明フィルムは, 破断強度が非常に高く (40MPa), 低伸び (5%) となった。アクリルゴムのカルボニル伸縮バンドに着目してFT-IRを測定したところ, 透明フィルムでは低波数側にショルダーが観察された。この結果から, アクリルゴム相とエポキシ樹脂相の間で相互作用が働き, 相分解が起こりにくくなったと推定した。