次世代薬理学セミナー要旨集
Online ISSN : 2436-7567
2025 宮崎
セッションID: 2025.2_AG1
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座長:東島 佳毅(宮崎大学 テニュアトラック推進室)、山下 智大(九州大学大学院薬学研究院創薬構造解析学分野)
ホスファターゼ活性化を基盤とした新規創薬戦略の創出を目指して
*大浜 剛
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抄録

リン酸化酵素(キナーゼ)の異常な活性化による細胞内タンパク質の過剰なリン酸化は、様々な疾患の発症や病態悪化に深く関与している。そのため、キナーゼ阻害剤はがんや自己免疫疾患を中心に臨床応用されてきた。しかし、がん領域では薬剤耐性や不応性の腫瘍が依然として大きな課題である。

忘れてはならないのは、タンパク質のリン酸化はキナーゼのみならず、脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)とのバランスによって制御されている点である。したがって、異常なリン酸化亢進は、「キナーゼの阻害」に加えて「ホスファターゼの活性化」によっても是正できるはずであるが、ホスファターゼ活性化剤はいまだ臨床応用に至っていない。

我々はこの点に着目し、主要ながん抑制因子であるPP2A(protein phosphatase 2A)を標的として研究を進めている。PP2A活性は多くのがんで低下しており、その背景には、SETをはじめとするPP2A阻害タンパク質の発現上昇が関与している。したがって、これらのPP2A阻害タンパク質を標的にPP2A活性を回復できれば、従来の抗がん剤とは異なる視点から、腫瘍制御に寄与できると考えられる。

本講演では、SETがPP2Aを阻害することでがんを悪性化させる分子機構と、NanoBiTシステムを活用して同定したSET–PP2Aのタンパク質間相互作用を標的とする新規化合物について紹介する。

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© 2025 本論文著者
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