『日本語教育』1号から150号までに掲載された全論文のうち,「社会との関わり」を扱った論文610編について,その研究テーマの変遷を社会的情勢の変化と関連させて論じた。全体として社会分野論文は,件数,全論文に占める割合ともに80年代後半まで順調に増加し,その後いったん停滞したものの,00年代後半には過去最高に達している。また刊行当初は国外の教育事情を紹介する論文が多かったが,80年代以降は国内における学習者の多様化に伴って国内の学習者に焦点を当てた論文が増えるなど,研究テーマが社会的情勢に鋭敏に反応して変化していることが認められた。さらに,社会情勢の変化に伴って生まれた新しい研究テーマを一過性のものに終わらせないためには,他の研究領域との連携により普遍性・一般性を追求していくという試みが重要になるとともに,日本語教育研究コミュニティ全体として「いま必要とされている研究とはどのようなものか」という議論を深め,研究観を拡張させていく必要もあることを論じた。