本研究では,日本で(生まれ)育った日本語を第二言語とする(以下,JSL)子どもの和語動詞の産出について,記述式調査票を用い,量的に調査した。調査対象とする動詞は,日本語モノリンガルが母語習得過程で自然に身につけると考えられる31語である。本稿では,比較対象とする同年齢のモノリンガルの点数が安定する小学4年生以上に的を絞り,結果を報告する(モノリンガル n=924;JSL n=124)。分散分析の結果,全ての学年において,JSLとモノリンガルの得点には有意差があり,効果量も大きいことが分かった。一部の「できない子」は,JSLとモノリンガルのどちらにも存在するが,最下位層と位置付けられた子どもの割合は,JSLとモノリンガルでは5~10倍程度の違いが見られた。また,誤答の詳細を分析した結果,JSLでは学校場面で用いられることの少ない動詞・用法の産出が弱く,動詞の意味範囲を間違って適用したケースや母語の影響と考えられる誤用も見られた。