日本語教育
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調査報告
海外の中等教育段階における日本語教育の研究動向分析
―中等日本語教育の理論構築に向けて―
大舩 ちさと
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2020 年 175 巻 p. 100-114

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抄録

 海外における日本語教育の最大の層は,中等教育段階における日本語教育 (以下,海外の中等日本語教育) であるが,日本国内では研究の蓄積の乏しい領域である。本稿では学会誌及び国際交流基金発行の学術雑誌3誌に掲載された海外の中等日本語教育に関する論考 (報告を含む) 155本を対象とし,研究動向を分析した。その結果,先行する政策を実現するために実践が試行錯誤される政策誘導型の特徴が見られ,制度構築を主眼に置いた研究が多く,実践の行われる国・地域の範囲内で考察が詳細に行われるという特徴が浮かび上がった。一方,海外の中等日本語教育の独自性を追求し,国・地域や政策の枠組みを超えて多様な実践を理論的・包括的に捉える研究は極めて少なく,1970年代から理論構築の必要性は論じられてきたが,実際には進んでいないことが明らかになった。海外の中等日本語教育のよりよい実践を生み出していくために理論構築が必要なことを示した。

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© 2020 公益社団法人 日本語教育学会
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