日本化学会誌(化学と工業化学)
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水耕栽培法によるカイワレ大根の発芽・生長時におけるランタノイドイオンの吸収,放出および各部位への蓄積
藤野 治勝部 宏明
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1999 年 1999 巻 11 号 p. 751-757

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抄録

カイワレ大根に対するランタノイドイオンの吸収,放出,蓄積ならびに発芽,生長に対する影響について検討した.ランタノイドイオンを含むpH5の培養液(200mL)に種子(20粒)をまき20℃ において,一週間発芽,生長させた.まず発芽過程(種子をまいてから約30時間)において,経時変化に伴い,水素イオンとランタノイドイオンは吸収され,一方,多量のカリウムイオンが種子から放出された.生育過程(30時間以降)になると水素イオンとランタノイドイオンはわずかではあるが放出され,種子自ら発芽過程で放出したカリウムイオンを急激に吸収し始めた.このように水素イオンやランタノイドイオンとカリウムイオンは強い負の相関関係にあることが明らかとなった.特に注目されたのはカイワレがランタノイドイオンとアルカリ金属やアルカリ土類金属などのイオン種とを識別し発芽段階で吸収し,生育過程で放出するなど水素イオンと同じ挙動を行うことであった.また培養液中においてランタノイド濃度が1ppm以下のときカイワレの発芽や生長には影響しなかったが,3ppmになると低下し始め,10ppm以上になると発芽してもほとんど生長しないなど,カイワレ生長に対するランタノイドの正の効果は認められなかった.

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