2020 年 34 巻 5 号 p. 683-692
1990年代の消化器疾患は,胃・十二指腸潰瘍や胃がんとウイルス性肝疾患が大部分であった.特にウイルス性肝炎は,後に肝硬変や肝細胞がんおよび門脈圧亢進症による合併症を起こし治療に難渋することが多かった.近年,抗ウイルス療法によりB型,C型肝炎ウイルスは駆逐もしくは制御可能となり,肝硬変と肝細胞がんも減少している.消化性潰瘍はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の慢性感染が発症に大きく関わることが判明し,除菌が可能となった現代では新規発症は激減した.代わりに,萎縮性胃炎に伴う低酸から,除菌や未感染に伴う高酸へと変化し,逆流性食道炎など酸関連疾患が増加している.さらに,大腸腺腫,大腸がん,潰瘍性大腸炎やクローン病など下部消化管疾患が激増し,近年の小腸研究の進歩から小腸を標的とした新規薬剤も多数登場している.その他,膵臓がんは急増しているがいまだ予後不良な疾患であり,早期発見への取り組みが非常に大切となっている.