抄録
目的:臨床検査の基準値には加齢に伴う変化が認められ,報告されている.しかし,これらは集団として観察したときの変化であって個々の例の追跡ではないためデータに連続性が認められず,加齢に伴う変化を示していない可能性がある.そこで,継続して人間ドックを受けている者を対象とし,個々の例における臨床検査値の変化を調査し,加齢による影響について検討した.方法:対象は,初回受検時に60歳以下で,その後1年に1回以上,かつ16回以上続けて関東労災病院健康管理センターで人間ドックを受けている男性とした.検査項目は,1986年から2006年までの間に測定方法が変更されていない項目とした.検討は,各例の臨床検査値の初回から5回目までの平均値(pre)と,最新5回の平均値(post)との差を対応のある t-検定で比較し,少なくとも半数以上の例が共通の変化を示す項目を調べた.有意水準はp<0.05とした.結果:対象は62例で,preとpostとの間で有意な差が見られ,同様の変化を示した例が半数以上であった項目は HbA1cとHDL-C,LDHであった.その他の項目は有意な差を示した例が半数以下であった.結論:HbA1cとHDL-C,LDHは加齢と共に変化する可能性があり,これらについては年齢別基準値を作成する必要性が示唆されるが,その他の項目については年齢別基準値を作成する必要性は明らかではなかった.