2000 年 62 巻 6 号 p. 783-787
皮膚生検術は皮膚疾患の診断確定や腫瘍の悪性の有無判定などに必要不可欠であるが,通常頻用されるメスを使用した生検術は切開方向の決定や真皮縫合に経験を要し,緊急時や熟練していない他科医には不向きであるため,刃を用いたシェーブ法や生検トレパンを用いた皮膚生検術は比較的簡便でかつ有用と考えられる。しかしながら,深層部の病変や厚みのある病変に対しては刃の長さの関係から十分な皮膚組織を採取することが困難な場合もあるため,今回はこの生検トレパンの刃を長くした,即ち有効頚が長いロングタイプのトレパン(カイインダストリーズ(株))を開発し,これを用いた生検術の手技を報告すると共に日常診療での応用方法も合わせ紹介した。この1年間で33例の経験があるが,深部に病変を有する有棘細胞癌や結節性紅斑,モルフェア,表皮の増殖を伴う乳頭腫をはじめ,表皮嚢腫や石灰化上皮腫のくりぬき法に有用性が見られた。