西日本皮膚科
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62 巻, 6 号
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図説
綜説
症例
  • 菅野 重, 森田 明理, 鈴木 やよい, 辻 卓夫
    2000 年 62 巻 6 号 p. 723-726
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    75歳の男性。約20年前から全身に丘疹,紅斑,苔癬化局面,色素沈着など多彩な皮疹が出現し,市販外用剤の他,他院で治療を受けていたが増悪,改善を繰り返していた。末梢血好酸球29%,1624/μlと著明に増加しており,病理組織では真皮上層にリンパ球と多数の好酸球の浸潤を認めた。精査の結果,皮疹,好酸球増多の明らかな原因を認めず,hypereosinophilic syndromeの湿疹·痒疹病変と診断した。治療としてPUVA-bath療法を行い,皮疹の改善を認めた。また, PUVA-bath療法後4ヵ月で好酸球数,eosinophilic cationic protein値をPUVA-bath療法前と比較したところ,ともに基準値まで減少を認めた。
  • 宇宿 一成, 猿渡 浩, 島田 英彦, 金蔵 拓郎, 神崎 保
    2000 年 62 巻 6 号 p. 727-729
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    73歳の男性。血管造影施行後cefazolin sodium(CEZ)を点滴静注された。数時間後よりそう痒を伴う紅斑が両大腿に出現し全身に拡大。初診4日後には紅斑上に膿疱が集籏性に出現した。検査所見では白血球増加と炎症所見を認めた。膿疱出現の前後で皮膚生検を行っており,病変の移行に伴う病理組織学的変化も観察し得た。初診4日後よりプレドニゾロン(PSL)40 mg/日より治療開始。皮疹は速やかに改善し,再燃を認めなかった。臨床像と検査所見および病理組織学的所見から,本例を多形紅斑から急性汎発性発疹性膿疱症へ移行したものと診断した。
  • 菅野 美紀, 籏持 淳, 新海 浤
    2000 年 62 巻 6 号 p. 730-732
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    26歳の女性。第2子出産後5日目頃より,四肢に自発痛を伴い浸潤をふれる紅斑が多発し腫脹も出現した。病理組織学的には,真皮内好酸球浸潤,脱顆粒,膠原線維変性を認めeosinophilic cellulitisと診断した。3年前の第1子出産後にも同様の皮疹が出現しており,出産が誘因となり出現したと考えられた。
  • 大藤 玲子, 清水 隆弘, 徳田 和央, 西田 輝夫
    2000 年 62 巻 6 号 p. 733-735
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    弾力線維性仮性黄色腫は,全身の弾力線維の変性により,特有の皮膚症状,眼底所見を呈し,しばしば心血管系の合併症を生じる稀な遺伝性疾患である。われわれは,眼症状を主訴に受診した弾力線維性仮性黄色腫の1例を経験したので報告する。症例は54歳の男性で,皮膚病変以外に,網膜色素線条があり,皮疹部からの生検標本で弾力線維の断裂および変性が認められた。特徴的な皮膚症状,病理組織学的所見および眼底所見よりGrönblad-Strandberg症候群と診断した。
  • 込山 悦子, 植木 理恵, 小池 美佳, 山下 真之, 坪井 良治
    2000 年 62 巻 6 号 p. 736-738
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    49歳と35歳の女性の外陰部に生じたhidradenoma papilliferumを報告した。本邦では本症は自験例を含めて53例の報告があり,30~50歳代の女性の外陰部,肛囲に好発する。自験例はジアスターゼ抵抗性PAS陽性, CEA陽性で,文献的にもアポクリン汗腺系の腫瘍であることを示唆する所見が多いが,その発生には部位特異的な要素が重要と思われた。
  • 凌 太郎, 三砂 範幸, 平 嘉世, 中房 淳司, 成澤 寛, 原口 彰, 陣内 卓雄
    2000 年 62 巻 6 号 p. 739-743
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    72歳,女性。初診の約7年前より左上眼瞼に小結節を認め,次第に増大し,潰瘍を伴う結節となった。上眼瞼結節の切除および下眼瞼を用いた有茎複合組織移植術を施行した。結節は,病理組織学的に眼瞼脂腺癌であり,浸潤形態よりZeis腺癌が考えられたがマイボーム腺癌も完全に否定できなかった。また初診の4年前に直腸癌の既往があり,Muir-Torre症候群と診断した。術後約2年,直腸癌,眼瞼脂腺癌ともに再発を認めていない。自験例は,Muir-Torre症候群に併発した眼瞼脂腺癌としては,本邦では初めての報告である。
  • 大藤 玲子, 内平 孝雄, 亀井 敏昭, 内平 信子, 清水 隆弘
    2000 年 62 巻 6 号 p. 744-746
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    79歳,女性の頬部に生じたメルケル細胞癌の1例を報告する。初診時,左頬部に直径8mmの淡紅色隆起性結節を認めた。病理組織学的に,真皮浅層から深層にかけて充実性に増殖する腫瘍巣を認め,腫瘍細胞は免疫組織化学的にcytokeratin(CK), epithelial membrane antigen(EMA), neuron specific enolase(NSE), chromogranin(CG)陽性であった。組織所見および電顕所見よりメルケル細胞癌と診断し,外科的切除を施行した。術後1年間経過した現在,再発·転移を認めない。
  • 寺内 雅美
    2000 年 62 巻 6 号 p. 747-749
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    当科で経験した11例の多発性血管脂肪腫の臨床上の特徴について検討を加えた。血管脂肪腫は男性に多く,平均年齢46.3歳,四肢に多発する傾向を認めた。血管脂肪腫は多分化能性未分化間葉系細胞の異常発生したもので,田中らの言う「良性間葉腫」として脂肪腫とは異なるが間葉系由来の一連の疾患であるという説に賛同したい。
  • 渡辺 秀晃, 末木 博彦, 飯島 正文, 中村 文規, 荒木 国興
    2000 年 62 巻 6 号 p. 750-753
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の女性。初診の3~4年前より,右大腿外側に移動性の無いそう痒を伴う紅斑,皮下硬結が出没していた。皮疹は週に1度の割合で出現し1~2日のうちに消退していた。初診時,右大腿外側に手拳大の,不規則ではあるが環状を呈する淡紅色紅斑を認め,その辺縁に指頭大の皮下結節を伴っていた。膠原病による紅斑,ライム病等を疑診し生検を施行。生検時,伸縮運動をする生きた虫体を摘出した。形態学的,皮膚病理組織所見および血清ELISA法にてマンソン孤虫症と確定診断した。近年のグルメブームの影響もあり,現在も寄生虫疾患の報告は多く,原因不明の紅斑·結節を診察する際に,寄生虫疾患も念頭に置く必要性を痛感した。
  • —妊娠中の抗ウイルス剤投与に関する一考察—
    廣田 洋子, 高旗 博昭, 西岡 和恵, 吉岡 宏記, 辰村 正人
    2000 年 62 巻 6 号 p. 754-757
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    30歳,女性,妊娠13週。24歳時より全身性エリテマトーデス(SLE)にて加療中。初診前日より頚部右側に有痛性紅色皮疹およびリンパ節腫大を生じ内科より当科紹介。当科初診時,右耳介から頚部におよぶ浮腫性紅斑,小水疱を集籏性に認め帯状疱疹と診断。妊娠中ではあるが,SLE患者で耳介部に発症していることから重症化する可能性が高いと考え,抗ウイルス剤の全身投与を行った。発症8日後には軽快,退院。妊娠38週に自然分娩で2535gの女児を出産。児に明らかな奇形は認めなかった。本例を中心に当科で過去3年間に経験した妊娠中に発症した水痘2例,および帯状疱疹3例の治療経過を報告する。
  • 渡邊 晴二, 藤井 俊樹, 河崎 昌子, 望月 隆, 石崎 宏
    2000 年 62 巻 6 号 p. 758-761
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    38歳の男性(獣医)。左前腕に生じたTrichophyton verrucosumによる体部白癬例を報告した。患部およびウシ白癬の鱗屑痂皮から,T. verrucosumが分離された。テルビナフィンクリームの外用を開始したが,外用10日後に皮疹は増悪したためビフォナゾールクリームに変更し,5週間後に略治した。患者は牧舎で白癬を持つウシより感染したと思われた。
  • —市販の感冒薬との関連が疑われた症例—
    寺前 浩之, 幸野 健, 石井 正光, 西 信一, 田川 進一, 山下 周子
    2000 年 62 巻 6 号 p. 762-765
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    57歳の男性。感冒のため,ジキニン®カプセルD内服後皮疹が出現,全身に拡大したため当院ICU入室となった。ICU入室時,体幹,四肢に水疱,びらんを伴う紅斑が多発し,また粘膜症状も認められ,Stevens-Johns症候群と診断,前医で開始されていたステロイド全身投与を継続した。ところがICU入室時の血液検査にてHIV-1陽性であることが判明し,また末梢血リンパ球の減少も進行したため,ステロイドを早期に減量するとともにヒト免疫グロブリン製剤も併用し,皮疹は軽快した。皮疹部よりHHV-6,7ウイルスDNAは検出されず,ジキニン®カプセルDにより誘発されたStevens-Johnson症候群の可能性を疑った。
研究
  • 片山 一朗
    2000 年 62 巻 6 号 p. 766-771
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    蕁麻疹における原因と治療を考える上で行うべき検査につき検討した。長崎大学医学部附属病院皮膚科を1985~1999年に受診した患者を対象とした。内訳は急性蕁麻疹患者(36名),慢性蕁麻疹患者(56名)であった。総白血球数,好酸球(%),CRP, IgG, IgM, IgA, IgE, GOT, GPT,アルカリフォスファターゼ,抗核抗体,CH50の12項目につき施行例の検討を行った。今回の検討で蕁麻疹患者では初診時,CRP値異常が多い事(急性60.7%,慢性59.5%),慢性蕁麻疹患者で抗核抗体の陽性率が高い事(25%,44%),白血球数4000未満が多いこと(6.25%,15%)が明らかとなった。逆に肝機能異常を示す患者はそれぞれ11.1%,7.3%と低かった。血清IgE値は300U/l以上の高値を示した者がそれぞれ30.7%,24%であった。好酸球数は慢性蕁麻疹患者で比較的高値であった。これらの結果より慢性蕁麻疹患者では自己免疫的な側面を呈する患者が比較的多く存在すること,急性,慢性を問わず何等かの感染症が蕁麻疹発症と関連する可能性があると考えられた。逆に従来蕁麻疹と関連の深い検査項目と考えられた肝機能異常は予想より低く,アレルギー素因もIgE値で見た場合30%程度と比較的その関与が低いと考えられた。これらの結果より蕁麻疹患者の検査項目として膠原病などの免疫異常,ウイルス,細菌感染の検討も必要と考えられた。
講座
治療
  • 石澤 俊幸, 近藤 慈夫, 白石 正, 仲川 義人, 長岡 栄子, 中村 幹彦, 阿部 吉明, 中島 基貴
    2000 年 62 巻 6 号 p. 777-782
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    殺菌洗浄剤である花王ソフティ薬用ハンドウオッシュ10®の抗菌効果と皮膚刺激性の検討を行った。減菌率や最小殺菌希釈倍率からみた抗菌効果は,他の殺菌洗浄剤である塩化ベンザルコニウムやトリクロサンに比べ優位に高く,消毒剤であるグルコン酸クロルヘキシジンやポビドンヨードとほぼ同等の効果を有していた。また本製剤の使用に伴う角層水分量の減少率や経皮水分喪失量は,他の製剤に比べ優位に抑えられていた。また46例を対象とした4週間使用における手荒れや使用後のアンケート調査については,2例に接触皮膚炎様症状が認められ,若干の皮疹スコアの悪化が見られたが,中等度以上の悪化は認められなかった。この臨床結果と角層水分減少率および経皮水分喪失量の結果より,花王ソフティ薬用ハンドウオッシュ10®は,従来の殺菌洗浄剤より医療従事者にとっては皮膚刺激が少なく,手にやさしい消毒剤として有用であると考えられた。
  • 前田 学, 佐藤 美貴, 岩田 浩明, 山崎 隆治, 澤田 陽子, 荒木 真理
    2000 年 62 巻 6 号 p. 783-787
    発行日: 2000/12/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    皮膚生検術は皮膚疾患の診断確定や腫瘍の悪性の有無判定などに必要不可欠であるが,通常頻用されるメスを使用した生検術は切開方向の決定や真皮縫合に経験を要し,緊急時や熟練していない他科医には不向きであるため,刃を用いたシェーブ法や生検トレパンを用いた皮膚生検術は比較的簡便でかつ有用と考えられる。しかしながら,深層部の病変や厚みのある病変に対しては刃の長さの関係から十分な皮膚組織を採取することが困難な場合もあるため,今回はこの生検トレパンの刃を長くした,即ち有効頚が長いロングタイプのトレパン(カイインダストリーズ(株))を開発し,これを用いた生検術の手技を報告すると共に日常診療での応用方法も合わせ紹介した。この1年間で33例の経験があるが,深部に病変を有する有棘細胞癌や結節性紅斑,モルフェア,表皮の増殖を伴う乳頭腫をはじめ,表皮嚢腫や石灰化上皮腫のくりぬき法に有用性が見られた。
  • M-732研究班
    2000 年 62 巻 6 号 p. 788-802
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    2%リラナフタートクリーム(M-732クリーム)の股部白癬に対する臨床的有用性の検討を目的として,1%ビフォナゾールクリーム(BFZクリーム)を対照薬とした多施設共同の無作為化比較試験を行った。治験薬は,1日1回2週間罹患部位に適量を塗布した。培養検査での菌陰性化及び皮膚所見の改善度に基づき最終観察日における有効率を判定したところ,M-732群はBFZ群に比べて同等であることが検証された。また,副次的に評価した中間観察日及び最終観察日における培養検査での菌陰性化率,総合効果·有効率において,M-732群はBFZ群よりも優れていた。皮膚所見の改善度·改善率と有用性·有用率においては,両群間に差が認められなかった。以上より,M-732クリームは, BFZクリームと同等の治療効果を有するとともに中間観察日における有効率の高さより,速効性を臨床的特徴として併せもっことが確認された。なお,安全性においてはBFZ群に劣ったが,総合的に判断すると臨床的有用性を有していると考えられた。
  • —イブプロフェンピコノールクリームとの比較—
    勝俣 道夫, 瀧川 雅浩, 杉浦 丹, 田中 信, 古川 福実
    2000 年 62 巻 6 号 p. 803-809
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    脂漏性皮膚炎の治療には,従来からステロイド外用剤が広く用いられてきたが,外用抗真菌剤であるケトコナゾールクリーム(商品名;ニゾラール®クリーム)は海外において高い評価を得ており,また国内で実施された治験においても改善率は70~80%であることが報告されている。今回我々は,顔面に病変部を有する脂漏性皮膚炎患者54例において,ケトコナゾールクリームと非ステロイド系抗炎症外用剤であるイブプロフェンピコノールクリーム(商品名:スタデルム®クリーム)との比較検討を行った。その結果,両群の治癒率および改善率·有用性は,ケトコナゾールクリーム投与群ではそれぞれ59%,93%,93%,イブプロフェンピコノールクリーム投与群ではそれぞれ8%,56%,56%であり,両群間には有意な差が認められた。ケトコナゾールクリームは,脂漏性皮膚炎に対してイブプロフェンピコノールクリームより有用性が高いと考えられた。
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