抄録
システム思考はシステム科学の一分野としてのシステムダイナミクスに起源をもつ考え方である。UNESCOのESD for 2030プログラムにおいて、批判的思考に並んで8つの基礎的コンピテンシーの一つに挙げられている。OECDのEducation 2030プロジェクトでは、必要とされる3つのコンピテンシーのうちの一つ「対立やジレンマを克服する力」に挙げられている。世界経済フォーラムのThe Future of Jobs Report 2025では、2030年のコアスキルの一つに挙げられている。にもかかわらず、日本ではシステム思考はほとんど知られていない。本稿は、システム思考の入門についての市民講座の実施報告である。氷山モデルを中心にして、システム思考を「できごとや時系列にとどまらずに構造とメンタルモデルを省察・対話・実践する習慣」と位置づけた。論理的思考の不都合や限界と、批判的思考とシステム思考がそれを補うことができるかについて、独自の考察を加えた。