2018 年 3 巻 1 号 p. 29-34
【目的】治療難易度の高い前下小脳動脈末梢部の破裂脳動脈瘤に対し,瘤内コイル塞栓術を施行し,良好な転帰を得た症例を経験したので報告する.【症例】47 歳の女性.左前下小脳動脈(anterior pontine segment)の囊状動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対し,瘤内コイル塞栓術を施行し,親動脈を温存して動脈瘤の完全閉塞を得た.その後,長期に再発を認めず経過している.【結論】同部の脳動脈瘤は極めて稀であり,その発生には先天的な血管壁の脆弱性と血行力学的ストレスの関与が示唆されている.血管内治療に際し合併症の危険が高いとされているが,本症例では,瘤内塞栓術により,母血管を温存し長期に動脈瘤の完全閉塞が確認され,瘤内塞栓術が有力な治療選択肢の1 つとなり得ることが示された.