看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2025幕張
セッションID: 2025.1_S1-2
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シンポジウム 1 麻酔分娩における医師と助産師の協働
麻酔分娩時の薬剤管理
*照井 克生
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会議録・要旨集 オープンアクセス

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抄録

シンポジウム「麻酔分娩における医師と助産師の協働」において、「麻酔分娩時の薬剤管理」を医師と助産師がどのように協働したら安全かつ効果的な麻酔 分娩を産婦に提供できるかについて解説したい。

• 対象とする麻酔分娩 薬物を用いる産痛緩和法には、硬膜外麻酔など脊髄幹麻酔を用いる方法と、

鎮痛薬全身投与法とがある。現在主流の硬膜外麻酔分娩に用いられる麻酔薬 と麻酔法、生じうる副作用や合併症対策を解説し、鎮痛薬全身投与法の一つで あるレミフェンタニル自己管理鎮痛法(IV-PCA)の危険性に警鐘を鳴らす。

• 硬膜外麻酔分娩での薬剤管理

硬膜外麻酔分娩で使用される薬剤は、局所麻酔薬とフェンタニルである。局 所麻酔薬は細胞のナトリウムチャンネル遮断が主な作用であり、神経細胞の興奮 と刺激伝導を遮断する。従って、局所麻酔薬過量投与や血管内誤注入により局 所麻酔薬中毒が発生すると、耳鳴、舌のしびれ、金属味といった低い血中濃度 で見られる症状から、興奮、譫妄、呂律が回らないなどの中枢神経症状が生じる。 より高い血中濃度の場合は、痙攣、不整脈、昏睡、心停止などの中枢神経症状 が発生し、適切に治療しないと死亡に至ることもある。また、硬膜外麻酔のつも りがカテーテルくも膜下腔に迷入に気づかずに、硬膜外麻酔に必要な用量の局 所麻酔薬を一気に注入すると、麻酔効果が頚髄に及んで呼吸停止となり、延髄 に及ぶと意識消失となる。硬膜外カテーテル挿入は触覚を頼りに盲目的に行わ れるため、カテーテルの血管内迷入やくも膜下迷入を常に疑ってかかる必要があ る。誤注入しても大事に至らないための方策が少量分割注入である。産婦の側 にいる助産師が麻酔合併症の早期発見と対処法に習熟することの意義は大きい。

硬膜外麻酔分娩では、局所麻酔薬を低濃度にして運動神経遮断を回避しつ つ、鎮痛効果を補うためにフェンタニルを添加する。フェンタニルの特徴と母児 への影響についても解説する。そして分娩進行において麻酔薬をどのように用い るか、私の経験から具体的に紹介したい。麻酔薬の注入速度や濃度を調整した り、追加したりする際には、麻酔範囲を評価して、分娩進行を把握したうえで行 う必要がある。そのため、医師と助産師の協働はとても重要である。

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© 2025 本論文著者
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