農産加工技術研究會誌
Print ISSN : 0369-5174
醤油の粘度について
大西 利男三好 英晃
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1959 年 6 巻 2 号 p. 41-47

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抄録

1. 醸造醤油,新式二号醤油,アミノ酸液の総窒素―粘度関係はARRHENIUSの実験式に近い値を示すことを明らかにし,同時に醸造醤油とアミノ酸液の粘度の間には大差があり,新式二号醤油のそれは両者の中間よりややアミノ酸液に近いことを示した。
2. 醸造醤油とアミノ酸液はpHが3.0から6.0に上昇するにつれて粘度も上昇するが,pH 3.0とpH 6.0の粘度の差は醸造醤油で2.6%,アミノ酸液で2.5%でほぼ同一結果となつたが,一般に醤油のpHは4.5~5.0であるから,その間の粘度の差は1%以内である。
3. 醸造醤油とアミノ酸液,塩水は温度が0°→50℃と上昇するにつれて粘度は低下し,低下の割合は蒸溜水のそれに近い値を示し,また醤油の濃淡の別なく同一傾向であつた。なお,冬季常温5℃の醤油は夏季常温25℃において粘度が半減する。
4. 醸造醤油とアミノ酸液を80℃に10時間加熱した場合,粘度は時間とともに漸減した。なお,加熱前に比較して加熱10時間後の粘度は醸造醤油で約2.6%,アミノ酸液では約1.3%の減少をみた。
5. 醸造醤油の経過月数と粘度について検討するために試料はすべて総窒素1.0,塩分18.0g/dlとして比較したが,粘度は仕込後3カ月までは急減したが以後は漸減した。このことは純エキス,全糖とほぼ同一の傾向であつた。
6. 醸造醤油,新式二号醤油,アミノ酸液の各1点につき総窒素1.0,塩分18.0g/dlのときの粘度の構成要素と構成比を検討し,アミノ酸と塩分からの粘度が大であることと,醸造醤油と新式二号醤油の場合,高分子物質+糖分がしめる割合は前者で約25%,後者で約10%であることを明らかにした。
7. 市販醤油7点につき,粘度の測定を行つたが最高4.195,最低2.992cpであつた。しかし,総窒素,塩分が一定しないのでおのおの1.0, 18.0g/dlに調製したが粘度は最高3.030,最低2.431cpであり,この差は醸造醤油と新式二号醤油,アミノ酸液の配合比に由来するものと考えられる。
終りに,本研究に御指導をいただいた村田清淳場長,諸種の有益なる御助言を戴いた大阪工業技術試験所四国出張所藤井,三井両技官に衷心より感謝いたします。また試料の提供を賜つた中讃醤油工業協同組合,堺屋醤油株式会社に厚く御礼申上げます。

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