日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
茶の浸出条件と可溶成分との関係
梶田 武俊西川 郁子岸田 典子長谷川 千鶴
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 11 巻 10 号 p. 429-435

詳細
抄録

茶の内容成分と溶出量との関係を,浸出温度および時間,水の種類,沸騰時間などを変え,かつ品質の異なる数種の茶について検討した。
なお参考のため原茶の葉位ならびに品種別と含有成分との関係について検討し,つぎのごとき結果を得た。
(1) 製茶(緑茶)において品質のよいものほど全窒素,タンニン,銅を多く含み,質のよくないものほどカルシウムを多く含有することを認めた。
(2) 浸出する水の種類により,溶出成分ならびに水色は著しく変化する。この変化には水の硬度およびpHが大きく影響するように思われた。
硬度が高くなるほどタンニンの溶出量は減少し,水色は濃くなることを認めた。
(3) 浸水温度が高く,また浸出時間が長くなるほどタンニン,還元糖の溶出量は増加し,水色は黒味を帯びてくる。これは溶存アルカリイオンのタンニンに対する影響ではないかと思われる。
(4) 浸出水の沸騰時間が長くなると可溶性窒素は減少し,タンニン,還元糖,鉄の溶出量は増加する。この原因については目下検討中である。
(5) 緑茶に含まれている全窒素およびタンニン,カルシウム量の多いものほど溶出量もまた多いことを認めた。すなわち窒素,タンニンは玉露に,カルシウムは番茶に多く溶出し,茶の品質と浸出液との間に密接な関係があるように思われた。
(6) 茶の葉位別による成分は,全窒素および銅は上位葉に多く,カルシウムは逆に下位葉に多く含有することを認めた。
(7) 茶葉中の含有成分量は品種により異なるも,供試品種数が少ないため今後さらに多くの品種について検討し,追って詳細に報告する予定である。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top