抄録
凍結乾燥カキ粉末の品質が貯蔵中にどのように変化するかについて検討するため,生カキおよびボイルドカキの2群をつくり,さらに各群に抗酸化剤処理のものと無処理のもの,高水分区のものと低水分区のものなど4区をもうけ,これを室温および3℃で9カ月間貯蔵し各区の色調,色差,酸価およびエーテル抽出物量などの変化について実験を行ないつぎの結果を得た。
(1) ボイルド処理を行なった試料は生カキ群のものに比べて貝肉部にひび割れを生じやすく色沢が低下した。また水を加えて復元させた場合,わずかに煮干臭が感じられたが,生カキ群のものは新鮮物そのままのカキ臭が感じられた。
(2) 生カキ群ボイルドカキ群とも,低水分区の試料に比べ高水分区のものは貯蔵中に著しく褐変した。
(3) 生カキ群の試料はボイルド処理を行なった試料に比べ酸価が高く,この傾向は高水分区の試料においてとくに顕著であった。
(4) 生カキ群の試料はいずれも経時的にエーテル抽出物量が低下し,とくに高水分区の試料にこの傾向が認められたが,ボイルド処理を行なった試料ではこのような変化はほとんど認められなかった。
(5) 抗酸化剤で処理した試料は無処理区のものに比べ変色は抑制され,酸価およびエーテル抽出物量の低減も小であった。
(6) 低温貯蔵(3℃)区のなかで生カキを抗酸化剤で処理し,水分1.0%程度まで乾燥した試料は3~4カ月ごろまでは乾燥直後の色沢を保持し,新鮮物に近いカキ臭が感じられたが,その他の試料はいずれも貯蔵後2~3カ月でカキの風味が消失し魚粉臭が感じられた。
(7) 貯蔵中における凍結乾燥カキ粉末の褐変と酸価およびエーテル抽出物量との間にはそれぞれ相関関係が認められた。