抄録
8品種のイチゴ果実とこれを用いて調製したジャムの揮発性成分組成をガスクロマトグラフイーにより明らかにし,官能的な香りとの関係についても検討し次の結果を得た。
(1) イチゴ新鮮果実から合計32成分を分離し,そのうち16成分を同定した。8品種の構成成分数は25ないし28でほとんど差がないが,成分の種類にはある程度の違いがみられた。
(2) イチゴ果実の揮発性成分の中心をなすものは1, 1-diethoxy ethaneであり,多くの品種では全揮発性成分の40~70%を占める。しかしマーシャル種は少なく約20%,ダナー,チヨダの2品種のように85~90%と著しく多いものもある。
(3) 品種間の揮発性成分の量的組成からみて成分量の比較的多いのはコーロ,クルメ,マーシャルの各品種であった。
(4) ジャムに加工すると揮発性成分数は新鮮果実の約半数となり,濃度も著しく減少する。
(5) ジャムの揮発性成分における1, 1-diethoxy ethaneの占める割合は,新鮮果実より一層大となり60数%ないし95%に達する。
(6) 揮発性成分の組成と官能的香りの関係は不明な点が多いが,1, 1-diethoxy ethaneなど組成の中心となる成分の香りへの影響が大きいように思われる。