抄録
甜菜糖,甘蔗糖が色素の安定性に及ぼす影響を調べるため,各色素を添加した砂糖溶液について,クセノンランプ照射,オートクレーブ加熱処理を行ない,また青色2号を添加した砂糖溶液を各種保存条件下で保存し,両種砂糖溶液中での色素の安定性を比較した。
(1) クセノンランプ照射による色素の安定性は,甜菜糖溶液中でのほうが甘蔗糖溶液中よりも良好で,その差はクセノンランプ照射に対して比較的安定な色素ほど顕著であった。
また,色素安定性と砂糖濃度に逆比例関係がみられ,砂糖濃度50%以下で,濃度が高くなるに従って,色素の安定性が悪くなることが認められた。
また,クセノンランプ照射中において,砂糖の転化が認められ,照射時間24時間で甜菜糖区が1%程度であるのに対し,甘蔗糖区が約20%と大きな転化率を示した。
(2) 135℃, 10~60分のオートクレーブ加熱処理においては,両試験区とも加熱時間が長くなるに従い退色するが,甘蔗糖区のほうが退色が大で,とくに赤色106号を除くキサンテン系色素において,その差が顕著であった。
pHは加熱時間10分で急激に低下し,その後,加熱時間が長くなるに従いゆるやかに低下し,甜菜糖区で約3.6,甘蔗糖区で約3.0となった。
また転化率は甘蔗糖区が大きく,加熱10分で50%,30分で80%以上であった。
なお,色素間のpH,転化率の差は,あまり認められなかった。
(3) 青色2号を添加した両種砂糖溶液を5℃および37℃暗所,室内散光下,直射日光下で退色試験した結果,いずれの保存条件でも甜菜糖区のほうが安定性が良好であった。