日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
貯蔵青果物の品質変化に関する生化学的研究
(第1報) バナナ果実の低温障害とgluconeogenesis
能岡 浄本田 幸一郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1970 年 17 巻 11 号 p. 489-495

詳細
抄録
台湾(高雄)産の緑熟バナナを6℃に貯蔵した低温障害果と,20℃に貯蔵した健全追熟果についてアミノ酸組成,α-ケト酸含量,見かけのglutamate dehydrogenase活性,14C-アミノ酸の取込みおよびPEP-carboxykinase活性を比較して次の結果を得た。
(1) 6℃に13日間貯蔵のものは緑熟果に比べて,プロリン,グリシン,アラニン,バリンなどのglycogenicamino acidsが減少している。いっぽうアスパラギン酸とグルタミン酸はわずかに増加するが,これらのアマイドは減少する。この低温貯蔵果を20℃に戻して6日目のものでは,上述のglycogenic amino acidsがすべて増加し,アスパラギンおよびグルタミンも著しく増加する。
(2) 低温障害果ではオキザロ酢酸の異常な蓄積がみられ,α-ケトグルタル酸も健全果に比べて2~3倍も多い。ピルビン酸は健全果のほうが多い。
(3) 果実切片にグルタミン酸を含むショ糖緩衝液を加えてインキュベーションしたときのグルタミン酸の消失量(見かけのglutamate dehydrogenase活性)は,障害追熟果は健全追熟果ほど増加しないが,グルタミン酸の消失量に比べてα-ケト酸,とくにオキザロ酢酸の蓄積量は増加する。
(4) 14C-アスパラギン酸の糖への取込みは,貯蔵7日と10日において障害果のほうが10倍以上も多くなっている。14C-グルタミン酸でも有機酸に対する糖への取込みの割合は,障害果のほうが少し大きい。
(5) PEP-carboxykinaseの活性は,貯蔵7日と9日において障害果のほうが4~5倍も高くなる。また低温貯蔵果を20℃に変温後6日のものでは,その活性はさらに高い。
著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top