日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
放射線照射による果実の熟度調整効果に関する研究
(第5報)トマト果実の追熟およびその生理作用に及ぼす影響(その2)
加藤 勝一茶珍 和雄
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1970 年 17 巻 3 号 p. 97-103

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抄録

(1) ガラス室栽培の「高津」と「揚子」(熟度breaker)を供試し,250, 500および1000Kradの線量のγ線を照射し,20℃貯蔵における呼吸作用,エチレン生成へのγ線の影響について検討した。
(2) トマト果実の炭酸ガス排出量は照射によって一時増大する。比較的空気の流通のよい貯蔵下で未照射区では2日後に,250Krad区ではそれより2日遅れてmaximumに達する。着色の進行も未照射区より2日遅れる。1000Krad区ではclimacteric riseは示さず漸減し,その量も少ない。
(3) エチレン生成量は照射により一時増加する。未照射区では貯蔵後2~7日の間に比較的ゆるやかなpeakが認められ,250,500Krad区では2日後の極大値を除けば追熟に伴う炭酸ガス排出量の変化とほぼ同様の傾向を示した。1000Krad区では照射直後増加するが数時間のうちに急減し,貯蔵中の生成量も少ない。
(4) 照射トマト(250,500Krad)に照射直後と照射後4日にエチレン処理(100,500ppm. 18時間)を行なった。未照射区では100ppm処理によってエチレン生成量は増加するが,貯蔵中そのpeakが早められることはない。250,500Krad区ではエチレン生成の増大が早められ,着色もやや促進される。また照射後4日に500Krad区(熟度light pink)に100ppm, 500ppmエチレン処理した場合でも同様な結果が得られた。
(5) 組織切片のエチレン生成は未照射区では組織を切ることにより増大するが,照射区では照射後1日ではその生成量は未照射区よりも少ない。250Krad区は貯蔵中に回復するが,1000Krad区は貯蔵中増大せず,生成量も少ない。
組織切片はH2O2, glycolate, oxalate, L-methionine,L-methionine+H2O2, citrate+H2O2を添加したところ,未照射区では各試薬について添加による増大効果がみられた。250Krad区では貯蔵中増大効果が回復するが,1000Krad区では生成量も少なく添加による増大効果もほとんどみられなかった。
(6) 1000Krad照射トマト組織のリン酸緩衝液による粗酵素抽出液を調製し,これを未照射,250Krad区の組織切片に添加するとエチレン生成が増大することが認められた。

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