日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
果実そ菜における含有脂質とその役割に関する研究
(第2報)露地トマト果実の成熟・追熟に伴うリン脂質の変化
南出 隆久上田 悦範緒方 邦安釜田 英雄
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1970 年 17 巻 3 号 p. 104-109

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抄録

(1) 露地栽培トマト,品種「米寿」を用い,成熟追熟中に伴うリン脂質の変化を調べた。
(2) 総リン脂質については,成熟が進むにつれて増加し,貯蔵4~5日後climacteric peakが現われるころに著しく減少し,その後追熟が進むにつれ漸次減少するが,貯蔵末期の果実が水泡状態になったものでは,増加を示した。
(3) 総リン脂質をTLCで各組成に分画し,そのおもな組成について定量した結果,PC, PEが全体の約60%を占め,PCは成熟中は,ほとんど変化ないが,貯蔵後4~5日ごろ,急激に減少し,その後漸次減少している。
PEは成熟中やや増加し,貯蔵後4日に減少しその後増加している。他の組成については,あまり著しい変化は認められない。
(4) リン脂質を構成している脂肪酸を,総リン脂質,PI, PC, PE, Cardiolipidについて,GLCを用いて調べたとこ,C18:0, C18:1, C18:2, C18:3, C16:0などが多く検出され,SFAは追熟が進むにつれ多くなり,climacteric peakが現われる貯蔵後5日には, C18:3, C18:2,C18:1などの高度不飽和脂肪酸が活発に利用されることが認められた。

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